妻はごはんでリセットしていた
今週のお題「ナイショにしていたこと」
妻の食べ方
かねてから妻の食べ方が気になっていた。
- サラダを完食してから他のものを食べる
- マックではポテトを完食してからハンバーガーを食べる
- 納豆は必ず単体で食べる
- 夕食にはかならずコップ一杯のお茶を用意する
何かルールがあるんだろうか。「三角食べ」がジャスティスな私としてはどうも腑に落ちない。そこで、妻の食べ方の秘密に迫ってみた。
私「サラダを最初に食べるのって意味あるの?」
妻「んー、サラダは草だから。」
なるほど、草だからか。
私「マックでポテトは?」
妻「んー、ポテトはサブだから最初に食べるよ。」
これはもう少し奥が深そうだ。
私「ってことはハンバーガーがメイン?」
妻「そうでしょ。2品しかないならポテトがサブでしょ。」
少し妻の食べ方がわかってきた。ルールは次のとおりだ。
- メインを決める。
- 草があれば草を片付ける。
- サブがあればサブを食べきる(サブの数だけ繰り返し)。
- メインを食べる。
妻はごはんでリセットしていた
私「じゃぁさ、納豆は単体食べだよね、ごはんと食べないの?」
妻「あー、ごはんはリセットするために食べるからね、一緒にはしないよ。」
ごはんでリセット?
私「舌をフラットな状態にするためにごはんを食べるってこと?」
妻「そうそう、ごはんでリセットする。ごはんがない時はお茶でリセットしてる。」
ごはんを用意しない時に必ずお茶を用意していたのはそのためか。
私「あー、ごはんを0として味がプラスかマイナスか確かめてるの?」
妻「マイナスなどない」
妻は食べるのが大好きで、食に大して愛がある。舌や鼻が敏感で食材に何を使っているのかわかるのは、こういう食べ方をしているからかもしれない。
ここまでわかった妻の食べ方を、妻がこの世で最も愛すべき料理「カツ丼」を例に示すと次のとおりだ。
- メインは肉
- サブの卵と玉ねぎを食べきる
- 肉を食べる
- ごはんを食べる(リセット)
- 肉を食べる
- ごはんを食べる(リセット)
- 以下繰り返し
妻の固定観念を覆した寿司屋
話を進めると、妻にはもう一つ譲れないルールがあることがわかった。
私「寿司はどうなの?」
妻「ごはんとおかずが同時に口に入るのはいやだから、本当は寿司はいまいち好きじゃなかった」
私「え、どういうこと?」
妻「んー、例えば猫まんまとか。味噌汁として完成されたものにごはん混ぜちゃだめでしょ。あと(同時に口に入れること自体に)なんとなく抵抗がある。」
一品、一品に対するリスペクトがあるようだ。抵抗があるのはなぜなんだろう?
私「寿司は完成されてるよね」
妻「そー、いままで寿司については抵抗があったけど、富山の寿司屋で考えが変わった。あれで完成された食べ物なのだと。」
昨年富山に行った時に立ち寄った松乃寿司。たしかに、醤油だけでなく素材の味を楽しめる食べ方をすすめてくれて、とても美味しかった。
あとあと調べると美味しんぼにも登場したお店だそうで、結果的にリアル「本当の寿司を教えてあげよう」になっていたようだ。
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口中調味(口内調味)の是非
私はごはんとおかずが同時に口に入ることに抵抗はない。妻のように抵抗がある人はいるんだろうか?と調べると、「口中調味(口内調味)」というキーワードが浮かび上がってきた。
味のないごはんを口の中で、おかずの味で味付けしながら食べていくという独特の食べ方です。たとえば、ごはんとお刺身を一口食べたあと、ごはんと野菜の煮物の一口に切りかえ、その次にごはんと漬物を合わせて味わい、さらにお味噌汁を飲みます。このような食べ方は、味付けしていないごはんの食べ方としては当たり前にみられるものです。
ツイッターでは、うちとまったく同じケースも見つかった。
おかずを食べる→(おかずが口の中に残っている状態で)ご飯を口の中に入れる→口の中でおかずとごはんを混ぜて食べる・・・これを『口中調味』というらしいが、おかずとご飯をこうやって食べることを結婚するまで知らなかった。(おかずを飲みこんでからご飯を食べてました。)
— Rie (@RieJP) 2010, 3月 3
更には、口中調味自体への評価としてはネガティブなものもあった。恥ずかしながら知らなかった…。
口中調味をする奴の定食屋での一コマ(ハンバーグ定食版)
ハンバークをひと切れ口に入れる→すぐに白メシをかき込む→これをひたすら繰り返す
→白メシだけ先になくなる→ハンバークの食い残しをちょっとだけ残した状態で待機・白メシ追加注文
→以下ループ見ててうわーってなる
貧乏臭すぎ
http://www.gurum.biz/archives/67501784.html
「口中調味」を調べる中で、「三角食べ」というキーワードも出てきた。
もともと、1970年代頃、日本の一部の学校における給食の指導で広められた言葉である。“和食をおいしく味わうため”として指導が行われたが、過度の管理教育につながった。そのため、現在では、ご飯とおかずを順番にバランスよく食べることは推奨されるものの、「三角食べ」として指導されることはほとんどない。
三角食べは上記の教育現場での問題以外にも様々な是非がある。日本食に固有の「口内調味」を実践できるものとして推奨している栄養士などがいる一方で、汁や飲み物でご飯などを飲み込む(押し流す)形になりかねず、咀嚼がおろそかになったり、唾液の分泌に異常が生じ、口腔乾燥症になる可能性があると主張する歯科医も少なくない。 また、おかずの味でご飯を流し込む食べ方になりがちなため急激な血糖値の上昇を引き起こしたり、口内調味を前提とした味の濃いおかずを食べる事による塩分摂取の過多に繋がると指摘されている。
私の場合は「三角食べ」が身についた結果、なんとなく「口中調味」になっているんだと思う。「口中調味」に対する抵抗のあるなしは、この「三角食べ」の管理教育を受けているかいないかの影響もあるんじゃないだろうか。
口中調味(口内調味)の根拠
ところで、自分にとってのジャスティスであるところの「三角食べ」の良さに確固たる根拠がないことを知ってちょっと落胆したのだけれど、強いていうなら「口中調味」を実践できることが「三角食べ」の良さであるそうだ。
では、「口中調味」の良さの根拠はどこにあるんだろうか?
口中調味という食べ方は、栄養バランスを、食べる人が自由自在にコントロールできるという優れた食べ方なのです。また、口中調味という食べ方は、味わいの面で高い文化性をもっていると同時に、ごはん食の健康性の基盤になっているといえます。
といった記載はあるもののいまいち根拠としては弱い。まず、誰が作った言葉なんだろう?と調べてみる。Google先生の情報をたどる限りでは、最も古いこの記事の出典にはこうある(タイムスタンプが「2001/02/01 」)。
『ごはん食』鈴木正成
和食普及研究会
口中調味に言及しているツイートには同氏の名前がちらほら。
先日、ラジオで、農学博士・鈴木正成氏の話を聞いた。日本人の、ご飯茶碗を左手に、ごはん→おかず→ごはんの順で食べることを“口中調味(こうちゅうちょうみ)”というのだそうだ。前に食べたものが口の中に残っている状態で、次に口の中に食べものを入れる。調味と創味を口の中でやってるんだって。
— アオミドリ (@emeraude_6436) 2011, 9月 7
農業わけ知り事典(山下惣一)を読んだ(1):口中調味=日本料理の特徴で鈴木正成教授の造語。和食の最大の特徴は始めから全部の料理が出されていて、各人が好みのものを取り合わせて口に入れ、好みの味にして食べる。和食の際立った特徴である。要は「三角食べ」ですね。
— まこく ジラ (@kuma_ku_ma) 2013, 2月 2
口中調味のつづき。鈴木正成「ごはん食こそ健康食」を入手しました。1987年出版。口中調味についてしっかり語っていました。
— mizusie (@mizusie) 2013, 3月 16
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口中調味のメリットや日本独自の食べ方であるといったことの根拠を知りたかったけれど、ネットの情報ではここまでが限界のよう。鈴木正成氏のこのあたりの論文をたどるともっとわかってきそうだ。
CiNii 論文 - "和風"ご飯食文化の国際化 : 口中調味の食べ方と健康性 (<特集>国際化社会と筑波大学)
まとめ
妻の食べ方の秘密から、確固たる自信を持っていた自分の食べ方の無根拠っぷり(今のところ)に辿り着いてしまった。
とはいえ、食べ方の根拠はつまるところ美味しく食べられるかだと思う。
前菜→スープ→メインディッシュ…と一品ずつでてくるフランス料理。もともとはテーブルにたくさんの料理を並べて食べる形式だった。ところが、一品ずつだすロシア式サービスの方が温かいものを美味しく食べられるということで影響をうけ、19世紀ごろから今の形式が定着していったそうだ(旅行者の朝食より)。
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お作法や食べ方そのものに固執して是非を問うてもあんまり意味はないのだろう。ということで、まとめとしては次の妻の言葉に集約される。
妻「その人にとって美味しい食べ方がジャスティス」