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ちょろげ日記

日々のちょろっとしたことを

乳幼児の予防接種、親が判断する余裕はあまりない

子育て

子どもの予防接種に関する「親の判断」について話題になっています。

igcn.hateblo.jp

感染症にかかって苦しい思いをする可能性があるのは、自分では判断する能力を持たない子供なのだ。

子供の予防接種拒否について思うこと:Unwise decisions尊重の限界 - Noblesse Oblige 2nd by iGCN

まさにそのとおりだと思います。

ただ、そう思う一方で、昨年子どもが生まれ、はじめて乳幼児の予防接種にドタバタした経験を思い返すと、そもそも親が適正な情報を入手して判断する余裕がとれないという現状にも問題があるなぁ、と改めて思いました。
 

乳幼児の予防接種にどのようなものがあって、どういったスケジュールで受けていくべきか、我が家は生後1ヶ月検診のときに知りました。

最初の予防接種は生後2ヶ月目に受けたほうが良いと言われるので、考える間もなくとにかく予約。それから一ヶ月の間に、慣れない育児に振り回される中で、受ける予防接種について調べたり、問診票を書いたり、任意接種のワクチンを受けるかどうか判断したり、とドタバタ。

この時に、ヒブっ何?副作用ってあるの?任意は皆どうしてるの?と落ち着いて調べる余裕はなかなかありません。言われるままに予約を入れて予防接種を受けて…という人も多いんじゃないでしょうか。
 
というわけで、親がしっかりと理解して判断ができるように産前に情報提供してくれるしくみがあればより良いと思いました。

定期接種は判断する余地はないと思いますが、それでも何のために受けて、どんなリスクがあるかは親として知っておくべきだと思います。

さて、言いたいことは以上なのですが、せっかくなので調べたこと&事前に知っていれば判断するのにもう少し役立ったかもしれないこと(主に位置づけや考え方)を備忘録がてら整理してみます。
 

予防接種の分類

BCG、麻疹・風疹混合、四種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)、日本脳炎、ヒブ、B型肝炎、ロタウイルスなどなど、予防接種の一覧を見た時の率直な感想としては「げっ、こんなにあるの?」でした。

まずは、個々のワクチンについて知る前に全体的な位置づけを理解しておくと判断がしやすくなるかもしれません。
 

定期接種と任意接種

予防接種は、大きくわけると定期接種と任意接種があります。

定期接種は予防接種法に基づいて市町村が実施し、決められた年齢で実施すれば無料です(一律無料と決められているわけではなく無料にするかは自治体の判断によるようです)。一方、任意接種は費用は自己負担となります。

分類 費用 ワクチン
定期接種 市町村 Hib、肺炎球菌、四種混合、BCGなど
任意接種 自己負担 B型肝炎、ロタウイルスなど

 

定期接種の位置づけ

定期接種はさらに一類疾病と二類疾病に分けられます。そして、乳幼児の定期接種に入っているものは一類疾病にあたります(自治体によってちがうかもしれません)。

そして、予防接種法における一類疾病の目的は「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するため」と記載されています。

伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために、予防接種を行い、公衆衛生の向上及び増進に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする。予防接種法

つまり、冒頭の記事に書かれてるように「個人防衛」だけでなく「社会防衛」のために受けるわけです。

予防接種を拒否する方々に言いたいことは、予防接種を拒否しても健康でいられるのは、その他大多数の人々がきちんと予防接種を受けているからだと言うことだ。

子供の予防接種拒否について思うこと:Unwise decisions尊重の限界 - Noblesse Oblige 2nd by iGCN

定期接種を受けないという選択肢があるのかわかりませんが、判断の際には少なくとも「社会防衛」という観点を踏まえなければならないと思います。
 

任意接種の位置づけ

任意接種は、予防接種法に定められていない予防接種です。定期接種との大きな違いは費用が自己負担であることですが、もう一つ金銭的な違いがあります。

それは、予防接種による健康被害が起きた場合の保証です。

分類 救済措置
定期接種 予防接種法に基づく救済措置
任意接種 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済措置

定期接種のほうが手厚い救済が受けられますが、その理由は「社会防衛」目的のために接種しているかどうかにあるようです。

補償内容が大きく違うのは、予防接種法による定期接種の場合は「病気のまん延を予防すること」が目的として明確に記されているからです。「自分のためだけではなく、他の人のために」接種した予防接種によって健康被害を受けたのだから、それだけ高い金額で補償しましょうということですね。万が一の健康被害が起こったら? - Know VPD!

 

任意接種を受けるべきか

それでは、任意接種について親はどう判断するべきなんでしょうか?

私たちの自治体では、乳幼児の任意接種の選択肢として「ロタウイルス」と「B型肝炎」がありました。

自己負担だし(しかも結構高い!ロタは1回1万円x3回、B型肝炎は1回6000円x3回)、予防接種法の一類疾病でも二類疾病でもないし、受けなくても良いのかなぁ。悩みどころです。

ただここで勘違いしてはいけないのは、任意接種であっても定期接種のものと同様に「ワクチンで防げる病気」であることです。こういった病気をVPD(Vaccine Preventable Diseases)と呼ぶそうです。

www.know-vpd.jp
 
単純に金銭面の負担だけで判断せずに、ワクチンを接種しないで起こるリスクと接種して起こるリスクを加味して、しっかりと親の責任で判断しないといけません。
 

ちなみに我が家では、B型肝炎は3歳までに感染するとキャリア(保菌者)になりやすいということや水平感染もありうるということ、そして、定期接種化される見込みがあることから、受けた方が良いと判断しました。

f:id:tyoro_ge:20150830224722j:plain 国立研究開発法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センター│B型肝炎についてより

現在、B型肝炎ワクチンは日本では任意接種ですが、1992年にWHOはすべての出生児にB型肝炎ワクチンを接種することを推奨しました。その結果、2009年までに世界177ヶ国で、生後0ヶ月から、または、生後2ヶ月から、さらに国によっては思春期の小児に対しても、定期予防接種として接種されています。平成27年1月9日、厚生労働省の専門部会はB型肝炎ワクチンを定期接種にすることを目指した意見をまとめました。早ければ平成28年度から定期接種化される見込みです。現時点では任意接種ですが、接種費用の補助金制度を設ける自治体も出てくるでしょう。B型肝炎ワクチン(任意接種) | 小泉重田小児科

 
ロタウイルスについても、重症化する場合があるということと、ロタにかかるケースが増える生後6ヶ月目がロタウイルス自体の流行のピークとなる4月に重なること、さらに保育園に入る予定の1歳から2歳ごろにかかるケースが多いことから、受けたほうが良いと判断しました。

f:id:tyoro_ge:20150830225545j:plain

わが国にロタウイルスワクチンは必要か?より

例年、3月から5月にかけて乳幼児を中心に胃腸炎の流行が起こり、この中にロタウイルスによる胃腸炎が多く含まれています。ロタウイルスに関するQ&A|厚生労働省

 
なんでもベロベロと舐めてガシガシ噛んでしまう我が子の今を見ると、受けさせて良かったと思っていますが、ドタバタした中で調べたのでもう少し余裕を持って考えることができたらなぁと思います。
 

複雑で過密な予防接種スケジュール

考える余裕があまりない理由は複雑で過密なスケジュールによるところもあります。

ワクチンの目的は予防ですから、できるだけ早く接種して免疫をつけなくては意味がありません。例えば、ロタウイルスにかかるケースが増え始めるのは6ヶ月目からなので、それまでに3回(または2回)の予防接種を済ませた方が好ましいはずです。

ところが、予防接種は間隔を空けないといけないのです。しかもワクチンには2種類あって、それぞれ間隔が違います。

分類 間隔 ワクチン
生ワクチン 4週間以上あける ポリオ,麻しん,風しん,BCGなど
不活化ワクチン 1週間以上あける 日本脳炎,B型肝炎,肺炎球菌など

ワクチンによって接種回数も変わってきます。

f:id:tyoro_ge:20150831001435j:plain 日本小児科学会が推奨する予防接種 標準的接種期間、日本小児科学会の考え方、注意事項より

最適なタイミングで予防接種をうけていくにはどうすればいいんだろう?これ何て無理ゲー?な状態ですが、ありがたいことに病院からはベストプラクティス的なスケジュールが紹介されました。

病院で紹介されたスケジュール表はこちら(これ以外にも病院・自治体が作成したものが数多くあるようです)。

f:id:tyoro_ge:20150831002310j:plain NPO法人 VPDを知って子どもを守ろうの会 おすすめ予防接種スケジュール

スマホアプリも提供されているそうです。 www.know-vpd.jp

これらを見つつ、どのパターンで受けるかを把握して予約。さらに私たちの自治体では、予防接種の予約日程を管理するシステムを提供してくれていたので、適切なタイミングで忘れずに受けることができました。
 
なんだ、複雑でも決まったスケジュールがあるなら良いか、とも思いましたが、子どもが病気にかかるなどスケジュール表通りに受けられなくなった場合のことを考えると、そう簡単な話ではないのだと思います。
 
また、上のスケジュールでは、任意接種のロタウイルスもB型肝炎も1回目に受ける設定です。とくにロタウイルスは1回目の接種を14週6日まで受けるように推奨されています。

日本では、2種類のロタウイルスのワクチン(単価と5価)が承認されていて、任意で接種を受けることができます。対象者はいずれのワクチンも乳児であり、具体的な接種期間は、単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間です。ただし、どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されます。ロタウイルスに関するQ&A|厚生労働省

ベストなスケジュールで予防接種を受けるためには、親の判断という点では、少なくとも生後14週6日までにロタを受けるかどうか決めないといけないわけです。
 

まとめ

ワクチンを受けない場合にどのようなリスクがあるか、受けた場合にどのようなリスクがあるか、受ける場合どう受けさせればいいのか。

冒頭に書いたようにドタバタの中の判断だったので、親としてベストな判断ができたかというと決してそうではないかもしれません。情報を整理して妻と検討する時間をもう少しあれば良かったなぁ、と思う部分が多々あります。

予防接種を推進するサイトには「生後1か月で1か月健診を受けたら、いよいよ予防接種に向けての準備です。」と、産後1ヶ月から始まるような書き方をしていますが、「産前中に受ける予防接種を知っておこう!せめて任意接種を受けるかどうかは決めておこう!」ぐらいから書いたほうが良いような気もします。
 

一方で、素人が生半可な勉強をして間違った判断をすることもあるかもしれません。ワクチンについてどう考えるべきか、まずは考え方から整理をしたほうが良いのかもしれません。

そこで、いまさらながら「予防接種は「効く」のか??ワクチン嫌いを考える? (光文社新書)」を読んでいます。

予防接種は「効く」のか??ワクチン嫌いを考える? (光文社新書)

予防接種は「効く」のか??ワクチン嫌いを考える? (光文社新書)


 
日本におけるワクチンにまつわる歴史と問題点がとてもわかりやすく、素人なりにもなんとなく全体観がつかめた気がします(ワクチンがどうやって効くのかとかそういう内容ではありませんでしたが)。考え方についてもなるほどと思うところが多々ありました。

要するにここで申し上げたいことは、予防接種を打っても打たなくても、多くの方には何も起きない、ということです。これが予防接種の本質です。ごく少数の人が予防接種の恩恵を受けて病気を回避でき、ごく少数の人が予防接種を 受けなかったがゆえに病気になって苦しみます。そして、簡単に言うと、予防接種を行う価値のあるワクチンというのは、この「予防接種をせずに病気に苦しむ人」と「予防接種を打って副作用で苦しむ人」とを比較し、前者が後者よりも大きい場合(単純に数的な問題ではないので、ここでの「大きい」はいろいろなことを意味しています)をいうのです。

冒頭の記事ではFacebook投稿への言及がありましたが、テレビであったり、インターネットの記事であったり、SNSの投稿であったり、そこで議論になっている内容がこの構造のどこに位置するものなのか見誤ると、間違った判断をしてしまうでしょう。

そこで素人の私ができるのは、自分で調べて、専門家の意見を聞いて、じっくりと考えることしかありませんが。

少なくとも、予防接種にかかわらず子育てについては、本の趣旨にある通り「「好き嫌い」と「正邪」の部分」を切り離した判断ができる親になれるよう努めていきたいと思います。