Twitterで著作権侵害の報告をすると個人情報が侵害者側へ伝わるしくみについてまとめ
自身の著作物が無断使用されていた場合、ツイッター社へ通知をすると当該著作物を削除してもらえるけど……この手続きの過程で、相手(著作権を侵害した側)に個人情報が渡っちゃうよ!という記事を読みました。
この件について、気になった以下の点をまとめてみました。これからツイッター社へ著作物の無断使用の通知をしようとしている方の参考になればと思います。
- ツイッターで「著作物の無断使用を通知する」ということは?
- 相手に何が送られるか説明されている?
- 実際に相手に何が送られる?
- まとめ
- 補足
長めなので、まとめからご覧にいただいてもよいかも。
なお、政府等の公式機関が公開している情報をもとに推測を交えたまとめです。ツイッター社の見解・確定情報ではないことをご了承ください。
ツイッターで「著作物の無断使用を通知する」ということは?
著作物の無断使用を通知する場合について、ツイッターのヘルプセンターには次のような説明が書かれています。
著作物の無断使用を報告する必要がある場合、以下の情報がすべて記載されたデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) の削除請求通知を提供してください。 Twitter Help Center | How to report violations
この「デジタルミレニアム著作権法 (DMCA) の削除請求通知」は、DMCAにおけるノーティス・アンド・テイクダウンの手続の1つにあたります。
ノーティス・アンド・テイクダウンとは何でしょうか?詳しくみてみましょう。
ノーティス・アンド・テイクダウン
アメリカでは、著作権侵害について無過失責任が認められています。
無過失責任を前提にすると、例えば、誰かが著作権を侵害するアップロードをした場合、アップロード先のプロバイダは自社の過失の有無にかかわらずその損害賠償責任を負うことになります。
仮に、そうならないようにプロバイダが全ユーザーをチェック・監視しようとすると過大なコストがかかってしまいます。
そこで、権利者から権利侵害に当たるとの通知があったときにプロバイダが遅滞なく削除した場合には法的責任を免責する、という規則が設けられました。これが、DMCAにおけるノーティス・アンド・テイクダウンの手続です。
米国では、1998年(平成10年)のデジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)において、一定要件の下、サービス・プロバイダーについて著作権侵害による損害賠償責任を免除している。また、一定の要件を備えた著作権侵害主張の通知を受けた場合には、サービス・プロバイダーは速やかに素材を削除等しなければならないというノーティス・アンド・テイクダウンの手続を設けている。(過失責任を原則とする我が国に対し、米国においては、著作権侵害について無過失責任が認められているため、この手続に従うことにより、無過失のサービス・プロバイダーは免責されることとなる。)
著作権審議会 第1小委員会 審議のまとめ
ノーティス・アンド・テイクダウンはどんな手続?
では、DMCAにおけるノーティス・アンド・テイクダウンは、どんな手続なんでしょうか?総務省の図解が比較的わかりやすかったので紹介します。
総務省 プロバイダ責任制限法検証WG 資料5 ノーティスアンドテイクダウン手続について
詳しくはPDFをご覧ください。
ここでは、PDFを参考にして、ツイッターでどのようにノーティス・アンド・テイクダウンの手続きが行われているか考えてみます。
Aさんが自身の著作物をパクリbotに無許可で使われていることを見つけ、ツイッター社に違反報告をする。というシチュエーションを想定。
② Aさんが著作権が侵害されていることをツイッター社に「通知」する。「通知」は署名等の要件を満たす必要がある。これがデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) の削除請求通知にあたります。
ツイッター社が提示している「通知」の要件は次の通り。
Twitter Help Center | How to report violations
③ ツイッター社は「通知」を受けてから速やかに当該著作物を削除する。これにより、ツイッター社の無過失責任が免責される。
④ ツイッター社は「通知」を受けて著作物削除したことをパクリbotアカウントへ速やかに通知するための合理的措置を講ずる。「合理的措置」をツイッター社がどう行っているのかは後述。
⑤-1 パクリbotアカウントが「反対通知」をしない。この場合は当該著作物は削除したままとなる。
⑤-2 パクリbotアカウントが「反対通知」をする。「反対通知」は署名等の要件を満たす必要がある。
⑥ ツイッター社は「反対通知」を受けて速やかにAさんに「反対通知」の写しを送る。この時、訴訟を提起した旨の通知を受けない限り10~14 営業日以内に情報を復活することを通告する。
⑦ 「反対通知」を受け取ったAさんが訴訟を提起し、その旨通知すれば、情報は削除されたままとなる。
⑧ 「反対通知」を受け取ったAさんが訴訟を提起しなければ、情報は復活。
つまり、ツイッターで「著作物の無断使用を通知する」ということは、DMCAのノーティス・アンド・テイクダウンの手続きを始めるということなんです。
また、「通知」後に速やかに当該著作物が削除されるのは、ツイッター社が無過失責任を免責するためですから、「ツイッター対応早い!ユーザーのためにすごい!」という称賛は間違いかもしれません。
相手に何が送られるか説明されている?
ツイッター社が「通知」を受けて著作物を削除した場合、そのことを相手(著作権侵害をしている側)に通知する必要があります。どのような内容をどう伝えるか?総務省の資料ではそれを「合理的措置」と表記していました。
では、ツイッター社はこの「合理的措置」をユーザーにどう説明しているんでしょうか?
「著作権とDMCAに関するポリシー」ページの記載より
Twitterは、コンテンツの削除やアクセス制限を行うことを決定した場合には、削除やアクセス制限の措置を行った上で、その措置が行われたユーザーに通知し、申立者からの申立て内容へのアクセスと異議申立ての方法を提供した上、チリング・エフェクツ(Chilling Effects)に申立ての写しを送付します。
「その措置が行われたユーザーに通知し、申立者からの申立て内容へのアクセスと異議申立ての方法を提供」と書かれています。
うーん、わかりにくいですが、「申立て内容」が相手に伝わると読み取れます。
「無断使用の通知」ページの記載より
この報告を処理する過程で、TwitterがChilling Effectsや影響を受けるユーザーなどの第三者に申し立ての写しと共に情報を提示する場合があることを理解しています。詳細は著作権に関するポリシーをご覧ください。 Twitter Help Center
こちらは実際に無断使用の通知をするときのページの記載。
「影響を受けるユーザーなどの第三者に申し立ての写しと共に情報を提示する場合がある」と書かれています。
うーん、これも微妙ですが、「申し立ての写し」つまりこのページに書く内容が相手に提示されると読み取れます。
実際に相手に何が送られる?
「無断使用の通知」のページの必須入力項目がこちらです。氏名・住所・メールアドレスが含まれます。
これらは申し立ての一部ですから、上記の説明の通りこれらが相手(著作権侵害をしている側)へ提示される可能性があるわけです。
実際、冒頭の記事ではこれらが相手に送られていることが確認されています。また、TwitterやGoogleで「twitter takedown notice」と検索すると、申請者の氏名・住所・メールアドレスが含まれた情報が相手に送られていることがわかるような結果が見つかります。
まとめ
ということで、これからツイッター社へ著作物の無断使用の通知をしようとしている方は、以下の可能性があるということを踏まえて、どうすべきか検討したほうがよいかもしれません。
- ツイッターで「著作物の無断使用を通知する」ということは、DMCAのノーティス・アンド・テイクダウンの手続きを始めるということ。
- ノーティス・アンド・テイクダウンの手続きに則り、「通知」を受けてツイッター社が著作物を削除した場合、そのことを相手(著作権侵害をしている側)に通知する。
- 相手に通知する内容は、申し立ての内容(氏名・住所・メールアドレスの記入が必須入力項目)を含む。