ちょろげ日記

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五反田、西安飯荘のよだれ鶏を食べたくてよだれがとまらない

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言葉の定義によれば、「よだれ」とは口から無意識に流れ出る唾液のことを言う。

「よだれが出る」や「垂涎の」など文章でよくつかう表現だけど、実際のところ、よほど口元がゆるくなければ唾液が口から流れ出ることはないのでは?と思う。

が、この記事で紹介する料理は想像するとまさによだれがでる。唾液が溢れ出る。それぐらいたまらない。
 

五反田、西安飯荘のよだれ鶏

その料理は五反田駅から歩いて数分のところにある中華料理屋、西安飯荘の逸品「よだれ鶏」だ。

f:id:tyoro_ge:20160106221116j:plain こちらが西安飯荘のよだれ鶏

写真をみて生唾を飲み込みながら記事を書いているが、味を語る前に少し西安飯荘の料理について調べたので寄り道してみたい。

  

西安料理とは

店名の西安は、中国陝西省(せんせいしょう)の省都。

馴染みがあまりない西安料理、Wikipediaの「日本における四大中国料理」図をみるとおおよそのイメージがつかめる。

中国料理-系統区分地図

図からわかるように西安のある陝西省は、北京料理の影響を受ける分類(紫色)にされている。実際、西安料理を冠するお店のなかには北京ダックがメニューにあるお店もある。

一方で、四川省が隣接するため、辛くてしびれる麻辣(まーらー)な味付けの料理も多い。例えば、隣接する山西省発祥の刀削麺と四川の麻辣を融合した麻辣刀削麺なんて料理もある。

f:id:tyoro_ge:20160106224301j:plain こちらは西安飯荘の刀削麺(麻辣じゃないものもある)。これまたうまい。

まぁ、大雑把に言うと四川料理と北京料理(山西料理)の美味しいどこ取りをした料理が、西安料理なのだと思う。
 

「西安」飯荘だけど四川料理が多い?

と、西安料理を調べたところで、ぐるなびのシェフのコーナー(こんなコーナーあるのか!)を発見。

1971年、中国四川省に生まれる。18歳で料理の世界に入り、成都のホテルに3年、九寨溝のホテルに6年など数々の飲食店やホテルで経験を積み、日本に。ここ西安飯荘で6年間、料理長として活躍。 ぐるなび - ユウケイヘイシェフ(西安飯荘)のご紹介

ということで、「西安」飯荘ではあるがメニューはどちらかというと四川料理をベースとしたメニューが多いのかもしれない。

では、四川料理は?というと、とにかく辛い!というイメージが先行する。

が、単に辛いだけではない。多様な味付けがあり、とてもで奥が深い。定番の味付けだけでも次のような種類があるそうだ。

・麻辣:しびれて辛い味。唐辛子と山椒の実で味付け

・香辣:唐辛子の辛さと香りを付けた味

・魚香:酸っぱく甘く辛い味。泡椒、大蒜、生姜が決め手

・紅油:ラー油ベース、赤く香りがいい味

・糖醋:甘酸っぱい味、砂糖と酢を使う

・香酥:油で揚げて香りを出す味

・怪味:甘酸っぱい、辛い、しょっぱいを混ぜた味付

・椒麻:しびれて辛い味。唐辛子と青い山椒の実で味付け

成都は中国一の旅行都市!パンダ、三国志・劉備、茶館、四川料理の魅力 - おいしい四川

f:id:tyoro_ge:20160106224643j:plain こちらは西安飯荘の香辣ジャガ。油で上げた香りとしびれる辛さのコンビネーション。麻辣香ばしいビールが進む逸品。妻曰く、最高級カラムーチョ(褒めてます)    
日本でもお馴染みの中華料理は元をたどると四川料理のものが多い。

中でも麻婆豆腐が一番有名だろう。他にも回鍋肉や棒々鶏も元は四川料理だ。もっとも日本に定着化した際に味付けが変わったこともあり、麻辣な味を連想する人は少ないかもしれない。

ちなみに、四川の省都は成都、三国志を知ってる人ならご存知の蜀。劉備や諸葛孔明がヒーヒー言いながら四川料理を食べたのかと思いを馳せようとしたらこんな記事をみつけた。

記録によれば、もともとの四川料理も香辛料が多く使われてはいたが、現在のようには辛くなかったという。しかし、度重なる戦火で成都などが荒廃し、人々も他の地域へ移り住むことで、明代末期には本来の四川料理は完全に失われてしまった。

現在の四川料理が生まれたのは、清朝の乾隆帝時代(1735年−1795年)で、2000年という歴史からすれば、ごく最近のこととも言える。この頃、主に湖北省や湖南省、広東省など中国南部から四川省へ多くの人が移住するようになったが、そうした民族移動のさなか、福建省から四川省へ行こうとしていたある男性が、湿気から荷物の豆に虫がわかないようにと干して唐辛子を入れたことがきっかけで生まれたというのが、有名な唐辛子味噌の豆瓣醤(トウバンジャン)だ。これを機に、唐辛子をふんだんに使った現在の「激辛」四川料理が生まれたのだという。

李白もびっくり!?昔は辛くなかった四川料理、激辛化したの...:レコードチャイナ

今のような辛い四川料理が生まれたのはここ300年ぐらいらしい(それでも十分ふるいけれど)。

四川料理を表す言葉に「一菜一格,百菜百味」という言葉がある。意味は「ひとつの料理にひとつの品格があり、百の料理には百の風味がある」。

四川省は中国の西部にあり、日本の約1.5倍もの広さで山に囲まれた場所にある為、ひと昔前までは農畜産物を用いた料理が中心でした。しかし、近年では流通の発達によりあらゆる料理や食材を取り入れ日々進化しています。その味の探求によって、四川料理は「一菜一格、百菜百味」(ひとつの料理にひとつの品格があり、百の料理には百の風味がある)と賞賛されています 四川料理について | 大阪 四川料理・御馥(イーフー)

多様な味を組み合わせ、時代に合わせて進化するのが四川料理の醍醐味とも言える。日本の辛くない四川料理もその一端なのかもしれない。
 

よだれ鶏の味

……という長い寄り道をへて、今回紹介したいよだれ鶏の味について書きたい。

f:id:tyoro_ge:20160106232952j:plain 西安飯荘のよだれ鶏ふたたび。

まず、日本で食する四川料理だけれど、西安飯荘のよだれ鶏はしっかりと麻辣(まーらー)だ。

辣味(ラーウェイ)は唐辛子による舌がヒリヒリする辛さで、これは想像しやすいだろう。よだれ鶏のうまさの決め手はやはり、麻味(マーウェイ)だと思う。

爽やかな香りと舌の両脇がシュワシュワとしびれる辛さ、花椒(ホワジャオ)と呼ばれる中国原産のスパイスががっつりと効いている。そして、入っていないはずのフルーツ寄りの酸味と甘味も感じる。

加えて、冷菜なのでじっとりとした辛さではなくスカッとした辛味を楽しむことができる。辛いのにペロッと食べてしまえる。流れ出てくる汗も爽やかだ。

さらにポイントは、ピーナッツ。この食感が抜群。蒸しどりの柔らかさとの相性が素晴らしい。

さらにさらに、一番下に敷かれたもやし。麻辣なタレにひたひたになった鶏肉にピーナッツの食感、そこにシャキッとしたもやしに歯ごたえが加わると……あぁ、よだれがとまらない。

好きな中華料理を聞かれたら間違いなく西安飯荘のよだれ鶏とこたえるだろう。
 

よだれ鶏の由来

好きな中華料理の由来ぐらい知っておけ、ということで、調べついでによだれ鶏という料理名の由来についてもまとめておきたい。

この名前については、ネットで探す限りでは次の由来が定説化されていることがわかる。いわく、四川出身の文学家、郭沫若(かくまつじゃく)の著書「賟波曲」にある次の一文からくるそうだ。

名前の由来ですが四川出身の文学家である郭沫若の<少年时代在故乡四川吃白砍鸡,白生生的鸡块,红殷殷的油辣子海椒,现在还想起来口水长流・・・>といった文章からきています。

元祖口水鶏(よだれ鶏)?・・・@重慶食べ歩き: 極楽ホッピー

文壇の巨匠郭沫若の文「少年時代故郷の四川で食べた茹で鶏の前菜は、ほれぼれするほど真っ白な鶏肉、赤黒い唐辛子とその油が、今思い出してもよだれが出てくる・・・」(巴蜀店主訳)が名前の由来ということです。

巴蜀BBS

また、その由来については成都市の有名レストラン兼調理師学校である「巴国布衣」の料理本の中で書かれているらしい。

原文にある通り、よだれ鶏の元となった料理名は「白砍鸡」と呼ばれる料理だ。それが、重慶で進化を遂げて、今の形になったらしい。

重慶の人が白砍鶏をベースに棒棒鶏の特性を追加して新しく作り上げたもの

元祖口水鶏(よだれ鶏)?・・・@重慶食べ歩き: 極楽ホッピー

よだれどりと言えばピーナッツが必ず入ります。それは四川の東、重慶あたりでピーナッツの栽培が盛んで、鶏の飼料にも入れており、その鶏を使った前菜にもピーナッツを使うことをしていたからです。

巴蜀BBS

たしかに原文にはピーナッツの食感について言及がない。(もしかすると入っていたかもしれないが)郭沫若が、ピーナッツが加わったよだれ鶏を食したらどんな文章を残すのだろうか。
 

何を食べてもはずれなし西安飯荘

ということで、新年早々、腹を鳴らしながら西安飯荘のよだれ鶏について書いてみました。

茄子の山椒つまみ揚げや麻辣チャーハンなど、「一菜一格,百菜百味」、西安飯荘では他にもおすすめが沢山。

娘(ただいま1歳)が生まれてからは、なかなか行く機会がないけれど思い出すとよだれが出るお気に入りのお店です。

r.gnavi.co.jp

「行ってみたいお店・レストラン」by みんなのごはん
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/gnavi201512