ちょろげ日記

日々のちょろっとしたことを

はてなブックマーク互助会の可視化

はてなブックマーク互助会のなんちゃって可視化を試みた話。

可視化してみた!といっても、プログラミング、可視化、まったくの門外漢がネットを調べながらやってみた…なので、素人のお絵かきレベルだと思って温かい目で見てください。

きっかけ

最近、はてなブックマークのホットエントリーを眺めていると「互助会」という言葉を目にするようになった。ブログの管理者同士がお互いの記事をブックマークし合う行為のことを指していて、はてなユーザーの間で問題視されているようだ。

しかし、相互ブックマークの目的を客観的に断定するのは難しいと思う。

はてなブックマークが3ユーザー以上になって新着エントリーに入り、そこから多くの人の目に触れるようになりブックマークが増え、ホットエントリーに入ってアクセスが増える。これは結果であって、相互ブックマークの元々の目的はブログ同士のコミュニケーションだったと言われれば、第三者がそれを否定するのは難しい。

客観的な情報が提示されればやっぱりおかしくない?と外野からのつっこみも入れやすいが、そういったユーザーの問題意識を全体の仕組みの中へどう反映させるかは、いずれにせよはてな次第となる。

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

であれば、個人ごとにフィルタリングするなどして対応するのが健全なのかもしれない。

topisyu.hatenablog.com

ただ、これは互助あれも互助と感覚的に除外していった結果、どくさいスイッチのごとく誰もいなくなってしまってはしょうがないので、やはり客観的に判断できる情報が可視化されているとうれしい。

そこで、はてなブックマーク互助会の可視化できないか試みた。
 
 

可視化の定義

次の定義とする。

f:id:tyoro_ge:20151012185526p:plain

データの収集は次の流れで行った。

  1. 調査対象のブログを設定
  2. 調査対象のブログの記事をブックマークした先着10名のはてなブックマークユーザーを取得
  3. そのうちはてなブログを運営しているユーザーを取得(①)
  4. ①のユーザーのブックマーク直近100件を取得
  5. ①のサイトの直近記事30件の平均被ブックマーク数を取得
  6. 上記をもとに定義の設定で描画する

10記事だとか10名だとか妥当な基準があるわけではない。まずは互助の傾向が見えるか試してみたいのでとりあえず適当に決めている。
 

はてなブログホットエントリーを可視化

はじめに、はてなブログホットエントリーにエントリーされている記事を起点に上記の定義に沿って可視化を行った。

f:id:tyoro_ge:20151013173535p:plain

こういったネットワーク分析(に適切な内容なのかわからないが)をする場合、コニュニティを検出する手法があるらしいが、理解するのに10年近くかかりそうなので次の機会にするとして、視覚的なあたりをつけて互助っぽいところを掘り下げてみる。

ざっくり、大きな○が平均被ブックマーク数80前後、中くらいが30前後、小さいのが10前後。赤色の線が多い付近はブックマークによるコミュニケーションが盛んなところ、青色付近はかなり濃密なコミュニケーションをしているところ、といった感じでチェック、その結果、次の2つの箇所に注目した。

  1. 目立つのは左側にある青色の線が密集した付近。ここはとても互助い。この中から1ブログを起点に可視化してみる。

  2. 真ん中の大きな○が集まり赤色の線が飛び交っている付近。ここは互助とは言いがたいが、ブログ間のコミュニケーションが盛んなように見える。赤色のやり取りが多いブログをいくつかピックアップして可視化してみる。

 

互助いコミュニティの例

上で上げた1について。左側に位置する青色の線が密集した付近のうち、1ブログを起点に定義の手順で可視化を行った。起点としたブログのノードを黄色にしている。

f:id:tyoro_ge:20151013173750j:plain

おおよそ8ブログで相互にブックマークをしていることが見て取れる。記事を投稿すれば最大8つの被ブックマークが得られ、その結果、平均被ブックマーク数が安定しているようにみえる。

これを互助とみなすかどうかは個人の判断によるが、これらの記事がホットエントリーに入ってくる仕組みが健全だとは思えない(はてなブックマークのホットエントリーを見る1ユーザーの感想です)。
 

大きなコミュニティの例

上で上げた2について。真ん中の赤色の線が飛び交っている付近から1ブログを選び、定義の手順で可視化を行った。起点としたブログのノードを黄色にしている。

f:id:tyoro_ge:20151013174945j:plain

上の互助いコミュニティに比べると規模が大きい。青色の線は少ないが、濃い赤色の線が多くはてなブックマークによるコミュニケーションが盛んなように見える。

また、平均被ブックマーク数が大きいブログが多く、それらのブログを中心にコミュニティが形成されているように見える。

平均被ブックマーク数は大きいブログはある程度内容が伴っていると思われるが、このコミュニティによってブーストしているようにも感じる。これを互助ととるかはなかなか難しい。

もちろんホットエントリーに入ってくるブログがすべてこういうコミュニティに属しているわけではなく、例えば次のようなパターンもある。

f:id:tyoro_ge:20151013175714j:plain

黄色のノードはホットエントリーから選んだ1ブログだが、相互にブックマークしている他ブログが少なく、はてなブックマークを介したブログ間のコミュニケーションはあまり行っていないように見える。
 

さらに大きなコミュニティの例

最後に、ホットエントリーの可視化から、はてなブックマークによるコミュニケーションが多くしているように見えるブログを10ピックアップ。それらを起点に定義に沿って可視化をした。

f:id:tyoro_ge:20151013181515p:plain

239ブログが抽出された。これらを互助会とみなすかどうかは人それぞれだが、青色の線や濃い赤色が飛び交っており、非常に濃厚なブックマークコミュニケーションが行われているのは間違いない。

中には内容がしっかりしていて(個人の感想です)平均被ブックマーク数が大きいブログもいくつかある。はてなの運営が仕組みを替えないのであれば、今後これらのブログがホットエントリーに頻繁に入ってくることが考えられる。上で上げたようなはてなブックマークコミュニケーションの少ないブログは相対的にホットエントリーに入りづらくなるだろう。

また、青色の線や濃い赤いの線が集まるコニュニティの中心となるブログも把握できる。このはてなブックマークコミュニティで濃厚なブッコミ(ブックマークコミュニケーション)をしたい方は、中心に位置するブログユーザーへアクセスするのが最短かもしれない。

delete-all.hatenablog.com
 

まとめ

というわけで、なんとなく互助会と言えそうなコミュニティと互助会に近い巨大なコミュニティが存在することがわかった。

冒頭で書いたとおりなんちゃって可視化なので、この内容が何かの意思決定や良し悪しを決めるものではないけれど、一応、個人が互助会フィルタリングする際の判断材料として使うこともできそうだ。めんどくさいのそんなことしないが。

また、前述したとおり、これらのブログからホットエントリーが頻出する状態を良いとするかどうかははてな次第だが、個人的にははてなブックマークのホットエントリーに求めるものとはちょっと違うかなぁと感じている。まぁ個人のたわごとなのでそんなのどうでもいいのだけれど。

ちなみに、この辺りの話に触れそうな記事があったので楽しみ。

はてなブックマークやPressoなどで提供する情報は、いわゆる『ニュース』になる前のものが比較的多いと思います。感度が高く、ある分野の情報を熱心に集めているユーザーが発見したインターネット上の情報(URL)が取り上げられるので、結果としてニュースを扱っていることになります

2ちゃんヤフーと対極 「はてな」のまったり感

はてなはどんなテクノロジーを使い、ユーザーコミュニティーとどう向き合おうとしているのか。次回以降詳しく見ていこう。

2ちゃんヤフーと対極 「はてな」のまったり感

余談。一連の作業はRとCytoscapeを使ってみました。ツールとして使った程度で本来の使い方にはなっていないけれど、プログラミングなんてまともにできない私でもそれっぽいアウトプットが出せるのにビビった。なんて便利な世の中なんだろう。

LenovoはThinkPadにスパイウェアを仕込んでいたのか?

Lenovoが起こした過去2回の問題と3度目の問題、そしてそれを指摘した記事の問題についてまとめました。

Lenovoへの不信感

1度目の不信

ノートPCを買うならThinkPad、トラックポイントに出会ってからそう決めていましたが、2015年2月のニュースや解説記事を読んでその気持が大きく揺らぎました。

Lenovoの消費者向けPCのすべてに、出荷時にSuperfishというアドウェアが載っており、それは中間者証明を使ってインターネットのブラウザに広告を注入する。それが悪用されると、そのサービスが、ユーザのブラウザデータへのサードパーティアクセスを許可することになる。

 <省略>さらにまずいのは、Superfishのソフトウェアを削除しても、Lenoveのマシンから証明は(したがって脅威は)削除されないことだ。

LenovoのPC全機種にプレロードされているアドウェアが実は恐ろしいマルウェアだった! | TechCrunch Japan

d.hatena.ne.jp

d.hatena.ne.jp

 
私用しているThinkPadシリーズはこのSuperfish問題では対象外だったものの、Lenovoそのものへの不信感メーターを振り切るには十分な内容でした。

さらにLenovoの公式発表は納得のいく内容ではなく(当初危険性がない旨を記載しておいてその後記載を変更)、結果的に私のLenovo不信感メーターはスカウターよろしく跡形もなくぶっ壊れたのでした。

ただ、最後の更新では次のような反省のコメントが書き加わっていて、信頼回復へのかすかな期待も抱いていました。

私たちは常に経験から学びながら、私たちが何をすべきか、どのように行うべきか、について改善を続けていく所存です。Superfishに関するレノボの見解

 

2度目の不信

それから半年経った2015年8月。再びLenovoがやらかしたという記事を目にします。

Lenovoが販売しているコンピュータの一部に、不要なソフトウェアを再インストールする仕掛けがあることがわかった。

 <省略>このエンジンはコンピュータのBIOSに搭載されており、Windowsの主要なシステムファイルを自身で置き換え、コンピュータがインターネットに接続されると、即座にファイルをダウンロードできるようにする。

 <省略>Lenovoは7月31日付けのセキュリティアドバイザリで、このエンジンがハッカーに悪用され、マルウェアをインストールされる危険があると警告した。同社はこのエンジンの機能を取り除くセキュリティアップデートを公開したが、このパッチはユーザーが手動でインストールする必要がある。

レノボ、一部製品で「Windows」の主要ファイルを無断で上書き - CNET Japan

 
今回もThinkPadシリーズは対象外でしたので対岸の火事感はありましたが、1度目の公式発表の反省に対して抱いた一縷の望みをぶった切る内容に、金輪際Lenovo製品は買うまいという思いをガチガチに固めざるを得ませんでした。

1度目のやらかしに比べてネット上での注目は低かったように感じましたが、私のような印象を受けた方は他にもいらっしゃったと思います。概ね以下の投稿と同じ印象です。

superfishの時もこの件も実装がタコで脆弱性が生じてるわけではなく意図した実装で傍から見たら頭おかしいとしかおもえない挙動をしているわけで社内的にこれにOKが出る風土の会社の製品はちょっとさすがに対象外だから買いますというわけにはいかないですね。。。Lenovo、ノートPCにWindowsを再インストールしても復活するダウンローダを仕込んでいた | スラド セキュリティ

 
 

3度目の問題発覚?

さらに2ヶ月ほどが経った2015年9月末、「またLenovo!今度はThinkPadにスパイウェアを潜ませていたことが発覚」というThinkPadは対象外だからセーフという唯一の私の拠り所をバズーカでぶっ飛ばすような記事が目に入りました。

megalodon.jp

記事のタイトルと内容が何回か更新されているため、私が最初に目にした時点のWeb魚拓を貼っています。この点については後述します。

2015年2月にも、Superfishなる悪質なアドウェアを埋め込んでいることが明らかとなり、大スキャンダルに見舞われたLenovoですが、この時同社の見解は、「Thinkシリーズには埋め込んでいない」というものでした。しかし、今回は図ったかのように、全てのThinkシリーズが対象となっています。

 <省略>マーケティング会社にデータを転送 さらに酷いことに、いくつかのデータはサードパーティーとシェアされていることが判明しており、オンライン・マーケティングやウェブ分析企業の名前が、ファイルに並んでいたとのことです。

 <省略>なお、どのようにすれば解除出来るのかは分かっていません。

http://iphone-mania.jp/news-87019/ - 2015年9月26日 08:16 - ウェブ魚拓

 
今のところ防ぐ手段がわかっていない、という結びに慌てて目の前のThinkPadのネットを切断、トラックポイントの赤いボタンを見つめ「ThinkPad、お前もか」と一言。

その後、したり顔で妻に如何にLenovoがダメなのかを説明し、新しいPCを買ってはいかがでしょうかという交渉を挑み玉砕(2ヶ月ぶり3度目)。

しばらくして、スマホから衝撃の記事を再びチェックするといつのまにか追記がされていました。どうやら回避手段があるようです。

f:id:tyoro_ge:20150928232647p:plain

タスクスケジューラで当該タスクがあればそれを無効にすれば良いようです。たとえば、Windows8であれば、Winキー+Sで検索を開いて「タスクのスケジュール」を検索して開いて、アクティブなタスクを確認。「Lenovo Customer Feedback Program」を無効にします。
 

記事への不信感

さて一段落したところで、あらためてこの記事ちょっとうさんくさくないか?という疑念が浮かんできました。気になったのは次の点です。

  • ソースが曖昧
    • 当初、今回の問題を最初に指摘したComputerWorldという媒体の記事へリンクが貼られておらず、それを紹介するBGRという媒体の記事へリンクが貼られていた(BGRからはComputerWorldへのリンクが貼られているのに)。
  • 元ソースで使われていない表現を使っている
    • ComputerWorldの記事とBGRの記事ではスパイウェアという単語を直接使っていないが「またLenovo!今度はThinkPadにスパイウェアを潜ませていたことが発覚」というタイトルにしている。
    • ComputerWorldの記事とBGRの記事では明確に書かれていない「マーケティング会社にデータを転送」という表現を使っている。
  • ミスリードを起こしそうな文章
    • まるでsuperfishと同じ問題がThinkPadでも起きたかのように受け取れる文章「2015年2月にも、Superfishなる悪質なアドウェアを埋め込んでいることが明らかとなり、大スキャンダルに見舞われたLenovoですが、この時同社の見解は、「Thinkシリーズには埋め込んでいない」というものでした。しかし、今回は図ったかのように、全てのThinkシリーズが対象となっています。」
    • どのようなデータが外部に送られているのか記事からは一切不明。スパイウェアという言葉から読者が連想するデータが勝手に第三者に送信されていると受け取れる。

この記事はもしかして、センセーショナルなタイトルで煽ってるけれど丁寧に調べて書かれていないのでは?と不安がよぎりました。
 

大元の記事を読んでみる

自分なりに整理するために、始めに今回の問題を指摘したComputerWorldの該当記事を読んでみます。

www.computerworld.com

ここでもどのようなデータがどこに送られているのか、具体的な内容は書かれていませんでした。唯一分かるのはそういったことをしているかもしれないタスクがスケジュールされているという点です。

さらに、記事の下部にあるコメント欄には記事への否定的な意見がいくつか投稿されています。

This is hardly indicative of anything malicious and doesn't even come close to the level of spyware. This task is no different than similar product telemetry and customer experience feedback programs that many vendors use and have for years.(適当意訳:これはスパイウェアのレベルではないよ。他のベンダーもやっているユーザー・エクスペリエンスのフィードバックプログラムと違いがないよ。)

 

Your article is based on opinion not facts.(適当意訳:あなたの記事は事実ではなくて個人的な判断に基づいていない?)

 

また、タスクスケジュールはWindowsの基本操作で確認できますが、記事ではなぜか「TaskSchedulerView」というソフトウェアを使うように誘導しています。

しかもこの記事の筆者が同じ媒体の別記事で同ソフトを紹介する記事を書いていたこともあり、アクセスを稼ぐために刺激的な内容にしたんじゃない?という指摘も投稿されています。

This article feels more like a publicity stunt than anything else. (適当意訳:この記事は何よりも売名行為のように感じられます。)

タスクスケジューラはWindowsの操作でこうやって見られるんだよ、と皮肉った書き込みも。

There is a Task Scheduler application built into the Windows OS. If you want to review your Task Scheduler on a Windows PC, you can search for it from the start menu, or go to the c: drive and search for Task Scheduler. From the native Task Scheduler application, you can run, end, disable, look at the properties, etc., for any task.

こちらはPowerShell版。

By the way, if you are running Windows 8 or later you should be able to use PowerShell to see all of your scheduled tasks without having to navigate the Task Scheduler. Open a PowerShell prompt and type:

get-scheduledtask

Or for something with a bit more detail try this one-line expression:

get-scheduledtask | Select Taskpath,Taskname,Description,State,@{Name="Action";Expression={$_.actions.Execute}} | out-Gridview -title "Scheduled Tasks"

 
また、全文の意味が取れないので引用しませんが、コメントの一つには「clickbait(釣りタイトル)」という単語も。

というわけで、ITと英語に精通している訳ではないので私が読み違えている可能性もありますが、私が記者であれば「またLenovo!今度はThinkPadにスパイウェアを潜ませていたことが発覚」というタイトルをつけるのはためらってしまう内容でした。

 

他の媒体の記事を読んでみる

さらに第三者の意見を知るためにRedditなどを流し読みしてみると、大元の記事を事実としたうえでLenovoを否定する声がほとんどでしたが、否定的な声もいくつかみつかりました。

redditでは他のベンダーでもやっているよという投稿がありました。

A lot of applications(even very popular ones) do it by default.First picture is Firefox, second is of Chrome, third is of Mozilla Thunderbird.(適当意訳:多くのアプリケーションでもデフォルトでやってるよ。)  

View post on imgur.com
https://www.reddit.com/r/pcmasterrace/comments/3m2uth/slug/cvc1245

Slashdotではどういったデータが送信されているか調べた上で、無害なんじゃない?と言及する投稿がありました(私ではこの投稿の信頼性は判断できませんが…)。

So the collected data looks mostly harmless and somewhat anonymous, as far as posting data to a website with a stored ID can be considered harmless.(適当意訳:集められたデータはだいたい無害で匿名化されているようだよ、まぁ、匿名化されたIDをつかって送信されてるかぎりは、だけど。)

Lenovo Collects Usage Data On ThinkPad, ThinkCentre and ThinkStation PCs - Slashdot

  

スパイウェアとは?

果たしてThinkPadにスパイウェアは入っていたのでしょうか?整理するために、まず「スパイウェア」の定義を調べてみます。

利用者や管理者の意図に反してインストールされ、利用者の個人情報やアクセス履歴などの情報を収集 するプログラム等

スパイウェア対策のしおり IPAセキュリティセンター

 

スパイウェアとは、しばしば最初にユーザーの同意を適切に得ることなく、以下のような特定の動作を実行するソフトウェアを表現した一般的な用語です。 広告の表示 個人情報の収集 コンピューターの設定の変更

マイクロソフトセキュリティセンター

 

スパイウェア とはパソコンを使うユーザーに無断で特定の場所にある個人情報やユーザーの行動などを収集し、取得した情報をマーケティング会社など スパイウェア の作成元に送付するアプリケーションソフトのことです。また、このような動作をスパイ活動と呼びます。

「スパイウェア」とは? - Lenovo Support (JP)

Lenovoのページには、はてブのコメントでお前が言うなというツッコミがしっかりと刻み込まれていますね。

で、若干定義にバラツキはあるものの、今回のケースに当てはめるとポイントは2つありそうです。

1つは事前に同意があったかどうか、もう1つはユーザーの個人情報や機密情報が収集されているか。

今回の各記事では、事前の同意の曖昧さについては詳しい説明がありますが、収集される情報については説明がありません。

何か情報を送ってそうなタスクがあるけど事前に明確な同意とってたっけ?という内容をもってThinkPadにスパイウェアが入っている!と騒ぎ立てるのは尚早だったんじゃないでしょうか(個人の感想ですが)。

 

まとめ

Lenovoの公式見解について

ダラダラと記事を書いているうちに、Lenovoが今回の問題について公式見解を出したようです。

news.lenovo.com

Lenovoの声明によれば、同社製品にはバックグラウンドでデータを送信するソフトウェアが搭載されているが、このことはソフトウェア利用許諾契約に明記されており、他社の製品やスマートフォンなどと同様、その目的は統計的な利用データの収集/活用による製品改善。このデータはユーザー個人や使っている端末とは紐付いておらず、個人を特定することはできないとしている。

Lenovo、ThinkPadのスパイウェア疑惑について声明 〜個人データは収集していない - PC Watch

 
ThinkPadにスパイウェアは入っていませんよ、ということなので、各記事への疑念は当たっていたようです。

ですが、1度目2度目の流れを見てきた私としては正直に言うと文面通り信じられないという側面もあります。同じ印象を持っている方もいると思います。

どういうデータがどう個人への紐付けなしにどこに送られてどう活用されているのか具体的な説明が合ったほうが良いと思いますし、それが事前にわかるように利用許諾契約に記載してユーザーから明確な同意を得るフローを設けるべきだと思います。

f:id:tyoro_ge:20150929024925j:plain

個人的には、現在の利用許諾契約の記載は曖昧な部分があるように受け取れます。
 
reddit等をみていると、Lenovoとvolkswagenを併記する書き込みをいくつか見ました。失った信頼を取り戻すのは簡単ではないのだと思います。
 

問題を指摘した記事について

ところで、スパイウェアと断罪していた記事に戻ってみると……

iphone-mania.jp

なんということでしょう、いつの間にか「スパイウェア」という言葉がきれいさっぱり消えているではないですか。そして、本文の修正加筆もあわせてどこをどう変えたのか記載されていません。また、現在書かれている内容もLenovoの公式見解とは乖離があるように読めます。

すでにLenovo製品は買うまいと決めた私への影響はありませんけれども、このサイトはGoogleでニュースサイト扱いになっていますし、「スパイウェア」と書かれた段階で記事を読んだ人への影響はそれなりにあるような…。

事実かどうか保証せずに速報的に伝えるというスタンスでもいいかもしれませんが、そうであれば元記事の情報を正確に伝えるべきですし、訂正があれば履歴を残すべきだと思います。

というわけで、Lenovoとそれを取り巻くニュースサイトの問題についてまとめました。今後、Lenovoの問題を指摘する記事が出たら、しっかり事実を確認した上で、妻へ新しいPC購入の交渉をしようと思いました。

Googleの新しいロゴへの批判と、実はロシア生まれかもしれないという話まとめ

Googleのロゴが新しくなりました。

私は、いちユーザーとして新しいロゴは結構気に入っていて、特にコンパクトバージョンのロゴ(Gのみのバージョン)は前より良くなったと感じています。

Googleの検索結果からタブを開きまくって探しものをすることが多いので、ロゴ(ファビコン)が目を引いたほうがいいんですよね。あぁ、さっきのGoogle検索結果を開いているタブはこれか、と。

f:id:tyoro_ge:20150905233721p:plain

公式の言葉を借りるなら、このタブにはGoogleの魔法が働いてるな、という感じでしょうか。

新しいロゴはユーザーの皆さんの利用シーンにあわせて、どんな小さな画面であっても、そこに Google の ”魔法“ が働いていることをお知らせできるように変わりました。新しいデザインは、入力方法や端末サイズにとらわれず、シームレスにつながっているコンピューティングの世界を表しています。Google Japan Blog: Google のロゴが新しくなりました

ちなみに、他のサービスだとピンタレストのファビコンも結構好きです(上のキャプチャ画像の左から3つ目)。

 

新しいGoogleロゴへの批判

さて、そうは言っても万人に受けるデザインというのは中々ありませんから、この新しいロゴについてもいろいろと意見はあるようです。

www.cnn.co.jp

米ニューヨーク市立大学のイーナ・ザルツ教授は、グーグルの新ロゴを「子どもっぽくて野暮ったい。幼児向けの粘土のようだ」と酷評する。さらに、小文字の「g」と「l」の間隔が狭く、最初の「G」と最後の「e」の角度の違いに違和感があり、大文字の「G」の右下が必要以上に突き出していると批判。フォントを変えずに従来のロゴを改良するにとどめるべきだったと主張している。

なんでこういうデザインなのか?という批判の多くは幾何学的なバランスに対してされることが多いような気がします。

もちろん、私のような素人が当て推量でデザインの根拠を探そうとすると、やはり幾何学的な根拠に頼ることになるでしょう。例えば、最後の「e」は「g」に合わせて角度を変えてるじゃないかとか。

f:id:tyoro_ge:20150906001732p:plain

ロゴを見ただけでデザイナーの狙いや思考プロセスまで透視することはできませんから、客観的に誰でも指摘しやすい幾何学的なバランスに批判が集中するというのは、まぁしょうがないかもしれません(実際は素人が線を引いただけではわからないような幾何学的な観点もあるのだと思いますが)。

ただ、そこはGoogle様、ぬかりなくコンセプトを説明するページをしっかりと用意していて、ロゴに込められた思いが伝わるように努めているように感じられます。

design.google.com
 

この辺は東京オリンピックのエンブレム問題で議論の焦点の一つがコンセプトの所在や説明不足にあったところにも通じる話なのかもしれません。

そういう意味でもこのツイートはなんというか皮肉が効いている感じがするようなしないような。

 

「G」マークに不安を感じる?

で、今回のGoogleの新しいロゴに対する、そういった線を引いてずれてるずれてないという指摘でもっとも盛り上がっているのがこちら。

Googleの新アイコンは何かがおかしい、良く見ると気づく意図的なデザインの破綻

そう、このGのマークは、パイチャートのように、円が青、緑、黄、赤で分けられているが、それぞれのパイの切目は円の中心には向いていないのである。このGのマークを良く見ると、どことなく不安な感じがするという人が現れているのもそれが元となっているのだろう。

View post on imgur.com

このロゴをみて不安になる人がいる、その理由は色分けされた切れ目の線を延長してみたら円の中心に向かっていなかったから、という指摘です。

ちなみに、そもそも指摘元のgifで使われているロゴが本来のロゴと違うよ(実際は「赤と黄色の境界の延長線上に緑と青の境界がくる」)という記事への指摘がありましたが、それでも趣旨はかわらないという追記がされています。

これについては指摘の通りとなるが、この指摘をしている人も書いているように「それはロゴの説明の動画を見なければ判らない」のである。 その意味において、何ら知識を与えられずにこのGロゴを見せられて、それぞれのパイの切れ目がどこに向かっているのか、示すと結果的に、上のアニメーションGIFのようになってしまうだろう。

指摘の不備はありますが、たしかになんでだろう?という疑問は少なからず浮かびますね。
 

「G」をぐるっと、Googleによる説明

この点について、先で紹介したGoogleがコンセプトを説明しているページではどう書かれているんでしょうか?

The color proportions convey the full spectrum of the logotype and are sequenced to aid eye movement around the letterform.(適当意訳:色のバランスは、Googleロゴの全領域であることを伝えていて、文字をぐるっと目で追うような並びにしている。)

うーん、なんとなく言わんとしていることがわかるような気がしますが、英語の訳は我ながらうさんくさいので、動画を見ながら理解を進めてみます(以下、Evolving the Google Identity - Articles - Google Designの動画より)。

f:id:tyoro_ge:20150906022931p:plain

Googleのロゴで使われている全色を配置することで、「G」の文字一つでGoogleロゴを示していて、

f:id:tyoro_ge:20150906020447p:plain

緑と黄、黄と赤の境界線によって、視線に方向性をもたせて、

f:id:tyoro_ge:20150906023149p:plain

ぐるっと「G」の文字を一回りするような目の動きを誘う。

つまり、単に「G」一つに「Google」ロゴの配色をしただけでなく、目で文字周りを一周させるようなしかけを入れることで「Google」ロゴそのものを見たことと同義のようにしているということでしょうか。

「G」をぐるっと見回してグーグル。

この解釈が合っているのであれば、すべての切れ目が円の中心に向かっているだけのロゴにしなかった理由がよくわかります。
 

それでも綺麗に線が引けないとおかしくない?

元記事では、だったら(上のような解釈が書かれていないのでどう解釈しているかわかりませんけれど)綺麗に線が引けるように黄色の領域を広げればいいんじゃない?という追記がされています。

f:id:tyoro_ge:20150906043324p:plain イメージとしてはこんな感じ

 

この点については明確な答えは見つけられませんでしたが、わかりやすい示唆があったので、次の意見を紹介しておきます。

ロゴについて議論がされていたredditへ投稿されたデザイナーを名乗る方の意見です。

www.reddit.com

The lack of symmetry and geometric balance is intentional. Our eyes don't see on a perfect grid - things like color, gaps, etc all influence our perception of the weight of things. A very basic example is the letter S. An S from a geometric font like Futura looks pretty close to being symmetrical, but if you you flip it over you can see how far off our perception is.(適当意訳:対称性と幾何学的なバランスの欠如は意図的ですよ。私たちは完全な格子で見ているわけでじゃないし、色とかで、私達がそのものの重みをどう認識するか変わってくる。たとえばとっても基本的な例でいうと、「S」という文字。Futuraフォントの「S」は一見、かなり対称であるように見えるけれど、反転させた場合どうみえる?)f:id:tyoro_ge:20150906030910p:plain

 
上の「S」は上半分と下半分が対称(回転対称?)に見えますが、実際はそうではありません。図面上で綺麗に線引したものが、実際に人間が見て綺麗に見えるとは限らないよ、という指摘です。

この意見には多くの賛同が集まっていて、例えば、デザイン経験のある別の方がこういった書き込みをしていました。

First I try to balance everything mathematically and then I fiddle with things until it feels right to me.I've noticed that very often I have to add a pixel or two of white space where, technically, there should be a fixed amount (eg, spacing between all elements is a multiple of 15 pixels)because even if things are perfect on paper they don't feel perfect when I look at them.(適当意訳:デザインする時は最初数学的にバランスをとるよう試すよ、その後、自分が正しいと思うまでいじるんだ。で、1または2ピクセルのスペースを追加することが頻繁にあるって気づいた。紙の上で完璧であっても、実際に見たとき完璧だと感じることはないから。)

この書き込みに対して「S」の例を示した方の書き込みがこちら。

Exactly!It's a real art form to find that balance. I have a ton of respect for designers who have mastered it. (適当意訳:その通り!そのバランスを見つけるのが本物の芸術形式だよ。それをマスターしているデザイナーは本当に尊敬するね。)

 
つまり、幾何学的にバランスがとれているということと見た人がバランスがとれているとことは別である、と。綺麗に線が引けないじゃないか!という指摘が必ずしもデザインの本質をついた指摘になるわけではないんですね。

そう考えると、新しい「G」のロゴを見て不安を感じる人がどれだけいるのかという話なのかもしれません。意外と多かったりして。
 

新しい「G」はロシア生まれ?

ところで、いろいろと調べていると新しい「G」ロゴにベースとなるデザインがあったという話をみつけました。

www.dailytech.com

2008年にロシア人デザイナーのDenis Kortunovさんが、Googleのファビコンをかえるべきだ!と4つのデザインを提案する記事を投稿していて、そのうちの1つのデザインが今回の新しい「G」ロゴのベースになっているそうなのです。

ウェブアーカイブにその2008年の記事が残っています。

web.archive.org

Теперь есть все четыре цвета и литеру G видно более явно.(ロシア語がわからないので機械翻訳:今四色があり、文字「Gをより明瞭に見ることができます。あなたの小さな光沢を配置します。) f:id:tyoro_ge:20150906050654p:plain

 
このロゴに線を引いてみると、色の境界線の向きが中心に向かっています。

f:id:tyoro_ge:20150906051149p:plain

ベースとなったロゴと現在のロゴどちらがバランスよく見えますか?私は現在のロゴのほうがバランスよく見えますが、みなさんはどうでしょうか。
 

まとめ

新しいGoogleロゴへの批判とロシア生まれかもしれないという話をまとめてみました。

円状の「G」にGoogleロゴの全4色を配色するというアイデアをもとに、視点の動きを考慮した配色バランスを考え、幾何学的なバランスを越えて人が見て満足するバランスにブラッシュアップしていく。

ロシア生まれが事実だったとしてですが、現在のロゴにいたるまでのプロセスが見えてくるようでなかなかおもしろかったです。 
 
オリンピックのエンブレム問題でも原案と修正が公開されてその過程の説明がありましたが、抽象的な表現だけでなくもう少し具体的で丁寧な説明が必要だったような気がします。まぁ、そうはいっても最終案の好き嫌いで話が終わってしまうので、デザインの仕事というのは大変な仕事なのだなぁと思います。
 

ちなみに、新しいロゴのコンセプトはもっと詳しく読みこむとさらに新しい発見が沢山ありそうです。

例えば、Googleがコンセプトを説明しているページで、これまで14000バイトだったロゴをたったの305バイトにできるようになったという記載があります(305バイト版のロゴはリリースされていないかも)。

only 305 bytes, compared to our existing logo at ~14,000 bytes.

これがどう実現されているか、こちらで解説がされていました。

How could Google's new logo be only 305 bytes, while its old logo is 14,000 bytes? - Quora

A simplified version of the new logo, on the other hand, can be constructed almost entirely from circles and rectangles (with the exception of the lower-case g)(適当意訳:新しいロゴの簡易版は(小文字のgを除いて)円や長方形でほぼ完全に構築することができます。) f:id:tyoro_ge:20150906053040p:plain

簡単な図形のみで表現できるので、SVGタグで書けてしまうそうです。

紹介されているコードを貼り付けるとこの通り。

すごいですね!

乳幼児の予防接種、親が判断する余裕はあまりない

子どもの予防接種に関する「親の判断」について話題になっています。

igcn.hateblo.jp

感染症にかかって苦しい思いをする可能性があるのは、自分では判断する能力を持たない子供なのだ。

子供の予防接種拒否について思うこと:Unwise decisions尊重の限界 - Noblesse Oblige 2nd by iGCN

まさにそのとおりだと思います。

ただ、そう思う一方で、昨年子どもが生まれ、はじめて乳幼児の予防接種にドタバタした経験を思い返すと、そもそも親が適正な情報を入手して判断する余裕がとれないという現状にも問題があるなぁ、と改めて思いました。
 

乳幼児の予防接種にどのようなものがあって、どういったスケジュールで受けていくべきか、我が家は生後1ヶ月検診のときに知りました。

最初の予防接種は生後2ヶ月目に受けたほうが良いと言われるので、考える間もなくとにかく予約。それから一ヶ月の間に、慣れない育児に振り回される中で、受ける予防接種について調べたり、問診票を書いたり、任意接種のワクチンを受けるかどうか判断したり、とドタバタ。

この時に、ヒブっ何?副作用ってあるの?任意は皆どうしてるの?と落ち着いて調べる余裕はなかなかありません。言われるままに予約を入れて予防接種を受けて…という人も多いんじゃないでしょうか。
 
というわけで、親がしっかりと理解して判断ができるように産前に情報提供してくれるしくみがあればより良いと思いました。

定期接種は判断する余地はないと思いますが、それでも何のために受けて、どんなリスクがあるかは親として知っておくべきだと思います。

さて、言いたいことは以上なのですが、せっかくなので調べたこと&事前に知っていれば判断するのにもう少し役立ったかもしれないこと(主に位置づけや考え方)を備忘録がてら整理してみます。
 

予防接種の分類

BCG、麻疹・風疹混合、四種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)、日本脳炎、ヒブ、B型肝炎、ロタウイルスなどなど、予防接種の一覧を見た時の率直な感想としては「げっ、こんなにあるの?」でした。

まずは、個々のワクチンについて知る前に全体的な位置づけを理解しておくと判断がしやすくなるかもしれません。
 

定期接種と任意接種

予防接種は、大きくわけると定期接種と任意接種があります。

定期接種は予防接種法に基づいて市町村が実施し、決められた年齢で実施すれば無料です(一律無料と決められているわけではなく無料にするかは自治体の判断によるようです)。一方、任意接種は費用は自己負担となります。

分類 費用 ワクチン
定期接種 市町村 Hib、肺炎球菌、四種混合、BCGなど
任意接種 自己負担 B型肝炎、ロタウイルスなど

 

定期接種の位置づけ

定期接種はさらに一類疾病と二類疾病に分けられます。そして、乳幼児の定期接種に入っているものは一類疾病にあたります(自治体によってちがうかもしれません)。

そして、予防接種法における一類疾病の目的は「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するため」と記載されています。

伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために、予防接種を行い、公衆衛生の向上及び増進に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする。https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/hourei/1.html

つまり、冒頭の記事に書かれてるように「個人防衛」だけでなく「社会防衛」のために受けるわけです。

予防接種を拒否する方々に言いたいことは、予防接種を拒否しても健康でいられるのは、その他大多数の人々がきちんと予防接種を受けているからだと言うことだ。

子供の予防接種拒否について思うこと:Unwise decisions尊重の限界 - Noblesse Oblige 2nd by iGCN

定期接種を受けないという選択肢があるのかわかりませんが、判断の際には少なくとも「社会防衛」という観点を踏まえなければならないと思います。
 

任意接種の位置づけ

任意接種は、予防接種法に定められていない予防接種です。定期接種との大きな違いは費用が自己負担であることですが、もう一つ金銭的な違いがあります。

それは、予防接種による健康被害が起きた場合の保証です。

分類 救済措置
定期接種 予防接種法に基づく救済措置
任意接種 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済措置

定期接種のほうが手厚い救済が受けられますが、その理由は「社会防衛」目的のために接種しているかどうかにあるようです。

補償内容が大きく違うのは、予防接種法による定期接種の場合は「病気のまん延を予防すること」が目的として明確に記されているからです。「自分のためだけではなく、他の人のために」接種した予防接種によって健康被害を受けたのだから、それだけ高い金額で補償しましょうということですね。万が一の健康被害が起こったら? - Know VPD!

 

任意接種を受けるべきか

それでは、任意接種について親はどう判断するべきなんでしょうか?

私たちの自治体では、乳幼児の任意接種の選択肢として「ロタウイルス」と「B型肝炎」がありました。

自己負担だし(しかも結構高い!ロタは1回1万円x3回、B型肝炎は1回6000円x3回)、予防接種法の一類疾病でも二類疾病でもないし、受けなくても良いのかなぁ。悩みどころです。

ただここで勘違いしてはいけないのは、任意接種であっても定期接種のものと同様に「ワクチンで防げる病気」であることです。こういった病気をVPD(Vaccine Preventable Diseases)と呼ぶそうです。

www.know-vpd.jp
 
単純に金銭面の負担だけで判断せずに、ワクチンを接種しないで起こるリスクと接種して起こるリスクを加味して、しっかりと親の責任で判断しないといけません。
 

ちなみに我が家では、B型肝炎は3歳までに感染するとキャリア(保菌者)になりやすいということや水平感染もありうるということ、そして、定期接種化される見込みがあることから、受けた方が良いと判断しました。

f:id:tyoro_ge:20150830224722j:plain https://www.kanen.ncgm.go.jp/forpatient_hbv.htmlより

現在、B型肝炎ワクチンは日本では任意接種ですが、1992年にWHOはすべての出生児にB型肝炎ワクチンを接種することを推奨しました。その結果、2009年までに世界177ヶ国で、生後0ヶ月から、または、生後2ヶ月から、さらに国によっては思春期の小児に対しても、定期予防接種として接種されています。平成27年1月9日、厚生労働省の専門部会はB型肝炎ワクチンを定期接種にすることを目指した意見をまとめました。早ければ平成28年度から定期接種化される見込みです。現時点では任意接種ですが、接種費用の補助金制度を設ける自治体も出てくるでしょう。https://www.koizumi-shigeta.or.jp/yobou3-09_HBV.html

 
ロタウイルスについても、重症化する場合があるということと、ロタにかかるケースが増える生後6ヶ月目がロタウイルス自体の流行のピークとなる4月に重なること、さらに保育園に入る予定の1歳から2歳ごろにかかるケースが多いことから、受けたほうが良いと判断しました。

f:id:tyoro_ge:20150830225545j:plain

わが国にロタウイルスワクチンは必要か?より

例年、3月から5月にかけて乳幼児を中心に胃腸炎の流行が起こり、この中にロタウイルスによる胃腸炎が多く含まれています。繝ュ繧ソ繧ヲ繧、繝ォ繧ケ縺ォ髢「縺吶kQ�シ�A�ス懷字逕溷感蜒咲怐

 
なんでもベロベロと舐めてガシガシ噛んでしまう我が子の今を見ると、受けさせて良かったと思っていますが、ドタバタした中で調べたのでもう少し余裕を持って考えることができたらなぁと思います。
 

複雑で過密な予防接種スケジュール

考える余裕があまりない理由は複雑で過密なスケジュールによるところもあります。

ワクチンの目的は予防ですから、できるだけ早く接種して免疫をつけなくては意味がありません。例えば、ロタウイルスにかかるケースが増え始めるのは6ヶ月目からなので、それまでに3回(または2回)の予防接種を済ませた方が好ましいはずです。

ところが、予防接種は間隔を空けないといけないのです。しかもワクチンには2種類あって、それぞれ間隔が違います。

分類 間隔 ワクチン
生ワクチン 4週間以上あける ポリオ,麻しん,風しん,BCGなど
不活化ワクチン 1週間以上あける 日本脳炎,B型肝炎,肺炎球菌など

ワクチンによって接種回数も変わってきます。

f:id:tyoro_ge:20150831001435j:plain 日本小児科学会が推奨する予防接種 標準的接種期間、日本小児科学会の考え方、注意事項より

最適なタイミングで予防接種をうけていくにはどうすればいいんだろう?これ何て無理ゲー?な状態ですが、ありがたいことに病院からはベストプラクティス的なスケジュールが紹介されました。

病院で紹介されたスケジュール表はこちら(これ以外にも病院・自治体が作成したものが数多くあるようです)。

f:id:tyoro_ge:20150831002310j:plain NPO法人 VPDを知って子どもを守ろうの会 おすすめ予防接種スケジュール

スマホアプリも提供されているそうです。 www.know-vpd.jp

これらを見つつ、どのパターンで受けるかを把握して予約。さらに私たちの自治体では、予防接種の予約日程を管理するシステムを提供してくれていたので、適切なタイミングで忘れずに受けることができました。
 
なんだ、複雑でも決まったスケジュールがあるなら良いか、とも思いましたが、子どもが病気にかかるなどスケジュール表通りに受けられなくなった場合のことを考えると、そう簡単な話ではないのだと思います。
 
また、上のスケジュールでは、任意接種のロタウイルスもB型肝炎も1回目に受ける設定です。とくにロタウイルスは1回目の接種を14週6日まで受けるように推奨されています。

日本では、2種類のロタウイルスのワクチン(単価と5価)が承認されていて、任意で接種を受けることができます。対象者はいずれのワクチンも乳児であり、具体的な接種期間は、単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間です。ただし、どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されます。繝ュ繧ソ繧ヲ繧、繝ォ繧ケ縺ォ髢「縺吶kQ�シ�A�ス懷字逕溷感蜒咲怐

ベストなスケジュールで予防接種を受けるためには、親の判断という点では、少なくとも生後14週6日までにロタを受けるかどうか決めないといけないわけです。
 

まとめ

ワクチンを受けない場合にどのようなリスクがあるか、受けた場合にどのようなリスクがあるか、受ける場合どう受けさせればいいのか。

冒頭に書いたようにドタバタの中の判断だったので、親としてベストな判断ができたかというと決してそうではないかもしれません。情報を整理して妻と検討する時間をもう少しあれば良かったなぁ、と思う部分が多々あります。

予防接種を推進するサイトには「生後1か月で1か月健診を受けたら、いよいよ予防接種に向けての準備です。」と、産後1ヶ月から始まるような書き方をしていますが、「産前中に受ける予防接種を知っておこう!せめて任意接種を受けるかどうかは決めておこう!」ぐらいから書いたほうが良いような気もします。
 

一方で、素人が生半可な勉強をして間違った判断をすることもあるかもしれません。ワクチンについてどう考えるべきか、まずは考え方から整理をしたほうが良いのかもしれません。

そこで、いまさらながら「予防接種は「効く」のか??ワクチン嫌いを考える? (光文社新書)」を読んでいます。

予防接種は「効く」のか??ワクチン嫌いを考える? (光文社新書)

予防接種は「効く」のか??ワクチン嫌いを考える? (光文社新書)


 
日本におけるワクチンにまつわる歴史と問題点がとてもわかりやすく、素人なりにもなんとなく全体観がつかめた気がします(ワクチンがどうやって効くのかとかそういう内容ではありませんでしたが)。考え方についてもなるほどと思うところが多々ありました。

要するにここで申し上げたいことは、予防接種を打っても打たなくても、多くの方には何も起きない、ということです。これが予防接種の本質です。ごく少数の人が予防接種の恩恵を受けて病気を回避でき、ごく少数の人が予防接種を 受けなかったがゆえに病気になって苦しみます。そして、簡単に言うと、予防接種を行う価値のあるワクチンというのは、この「予防接種をせずに病気に苦しむ人」と「予防接種を打って副作用で苦しむ人」とを比較し、前者が後者よりも大きい場合(単純に数的な問題ではないので、ここでの「大きい」はいろいろなことを意味しています)をいうのです。

冒頭の記事ではFacebook投稿への言及がありましたが、テレビであったり、インターネットの記事であったり、SNSの投稿であったり、そこで議論になっている内容がこの構造のどこに位置するものなのか見誤ると、間違った判断をしてしまうでしょう。

そこで素人の私ができるのは、自分で調べて、専門家の意見を聞いて、じっくりと考えることしかありませんが。

少なくとも、予防接種にかかわらず子育てについては、本の趣旨にある通り「「好き嫌い」と「正邪」の部分」を切り離した判断ができる親になれるよう努めていきたいと思います。

娘が成長した夏

今年の夏は7ヶ月になった娘を連れて私の実家がある長野県に行きました。

久しぶりに会う孫にあふれんばかりの笑顔で出迎えるおじいちゃんとおばあちゃん。

いつもは見ることがない山々や田んぼやたくさんの自然。

いろいろなものを見て触って、沢山の人に可愛がられて、いつもとは違う環境に囲まれた三日間、娘が一回りも二回りも成長した夏でした。

f:id:tyoro_ge:20150826234400j:plain はじめての浅間山、娘の眼にはどう映ったんだろう?

今週のお題特別編「はてなブログ フォトコンテスト 2015夏」
 

そんな帰省の様子と帰宅後の成長の様子。

f:id:tyoro_ge:20150827002211j:plain はじめての顔ハメ看板は新幹線@佐久平駅となりました。

f:id:tyoro_ge:20150827002505j:plain ちなみに、乳幼児連れの場合はオムツ替えができるように多目的トイレがある車両の近くの席を取るのが理想です。更に言うと、多目的トイレ側に近い一番まえの席(他の席より広い!)が理想なのですが……今回は予約できませんでした。みんな考えることは一緒ですね。

f:id:tyoro_ge:20150827002812j:plain 実家に着いたらまずはご先祖様にはじめてのご挨拶。浅間山を臨む我が家のお墓へ。いい天気!

f:id:tyoro_ge:20150827003835j:plain その足で、わがふるさと東御市の(数少ない)観光スポット「雷電くるみの里」へ。直売所でトマトなど超充実の夏野菜を購入。そして、車で少しの場所にある「アトリエ・ド・フロマージュ」へ行って濃厚モッツアレラチーズを購入。娘はお眠かな。

f:id:tyoro_ge:20150827004439j:plain 実家に着いてあらためておじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶タイム。が、おじいちゃんに号泣する問題勃発。横にそっと座っていただいても顔を見た瞬間「ヒッ」といって号泣、めちゃくちゃ泣く。三日間号泣され続けたじいちゃんは少しさみしそうでした。

f:id:tyoro_ge:20150827005021j:plain 一方、おばあちゃんとは意気投合。0歳児と65歳児のハイハイレースが毎夜繰り広げられたのでした。

f:id:tyoro_ge:20150827005143j:plain 2日目のお昼は、雷電くるみの里で買ったトマトとアトリエ・ド・フロマージュで買ったモッツアレラチーズで作った絶品ピザ。うますぎた。

f:id:tyoro_ge:20150827005157j:plain 娘は匂いだけ堪能。かわりにおじいちゃんに買ってもらったおもちゃをカジカジ。娘よ毎度号泣するあの人がそのおもちゃを買ってくれたのですよ。

f:id:tyoro_ge:20150827010035j:plain おばあちゃんがイオンで服を買ってくれるということで、上田のイオンへ。授乳室で身長も測ってみました。7ヶ月目で70cmなので平均より背が高いようです。将来はモデルだね、から芸能界は厳しいからねぇまで続く親バカトークフルスロットル。

f:id:tyoro_ge:20150827005523j:plain その後、実家のお猫様にもご挨拶。はじめての至近距離の猫だけど相性は良さそう。お互い何を考えてるんだろう。

f:id:tyoro_ge:20150827005633j:plain 今度はお犬様。こっちは相性悪いのかなぁ。娘は猫派のようです。

……と、他にもいろいろな場所に行って、いろいろな人に会って刺激を受けた帰省となりました。

f:id:tyoro_ge:20150827010421j:plain そうそう、娘が生まれた記念にとさくらんぼの木を2本植えてくれていました。なんでも実をつけるには2本植える必要があって、しかも別の品種じゃないといけないそうなのです。何年後に実がつくんだろう?帰省する楽しみができました。
 
そして、長野から返ってきた翌日、赤ちゃんはいろいろな刺激をうけると成長するといいますが、なんと!

f:id:tyoro_ge:20150827010819j:plain いきなりのつかまり立ち!

というわけで、娘が成長した夏でした。