ちょろげ日記

日々のちょろっとしたことを

旅と米

大の旅行好きというわけではないが、年に1,2回のくらいの頻度で旅行にでかける。その土地の歴史や文化、生活を見聞きして体感するのはとても楽しい。その点、ご当地料理を食べることはまさに旅の醍醐味といえる。

米も当然ながらその土地その土地で存在感が違ってくる。これまでどんな米と出会ったのか、過去の旅で出会った米を思い返してみた。

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グーグルフォトで「食品」や「米」で検索すると関連する写真が出てくるので便利
 

ミラノと米

数年前に妻と新婚旅行でイタリア旅行に行った。各地の美味しい食べ物を頬張る妻の笑顔が多い旅だったが、そのうちで思い出深いのがミラノの米だ。

ミラノは、他のイタリアの都市と同じように荘厳なドゥオーモ(大聖堂)がある一方、現代しかも風変わりなビルが目立ち、文化と工業が入り混じった独特な雰囲気が印象に残っている。

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まさに荘厳だったミラノの大聖堂

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ミラノの風変わりなビルと大聖堂屋上からの眺め。聖人が見渡す街にはビル、その先にアルプス山脈。他の都市にはなかった風景が広がる。

ローマやフィレンツェとは何か違う、そんな印象は食でも感じた。パスタではなく米を使う名物、そうミラノ風リゾットだ。

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パスタやパンなど小麦粉にどっぷり浸かっていた旅であったので、米、というだけで胃袋が刺激されたのを覚えている。ただ、米といっても日本の米よりは芯がのこっていて食感は違う。そもそも種類が違うのだ。

イネの品種は、日本で食されるジャポニカ米、タイ米などと呼ばれるインディカ米の2種類に大別される。イタリアでは、ジャポニカ米から分化したジャバニカ米という品種が主に食べられる。

このジャバニカ米、遺伝子的には日本の米の親戚だといっても、長さと幅も大きく粘り気が少ない。そういった特性もあり、リゾットもパスタ同様にアルデンテで調理する。

ミラノ風リゾットの味はというと、サフランの香りにバター、ブイヨンなどで結構こってりな味付け。これに日本の米だと重すぎる感じだ。

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一緒に頂いたミラノ風カツレツ

ミラノは緯度が北海道と同じくらいなのでジャポニカ米の栽培も可能だろうから、長い歴史の中ではジャポニカ米も食されたことがあったはずだ。しかし、粘り気がイタリア人の味覚にあわず淘汰。イタリア人の好みの味付けに合うジャバニカ米が生き残ってきた、と勝手に想像する。

主食というより食材の一つとして受け入れられてきたんじゃないだろうか。

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スフォルツェスコ城と人を飲み込む竜が描かれたミラノ公国

ちなみに、イタリアの稲作の起源をさかのぼると、ミラノが起点となった説がある。

お米の栽培を奨励したのは、ミラノの公爵である。平野が広がるミラノ周辺は、お米の栽培には向いていたためである。1473年の公爵の手紙には、「私の領土に米を植えた。しかし、栽培方法に明るくないので、詳しい者を招聘した」①と書かれている。この時代にミラノで活躍していたレオナルド・ダ・ヴィンチも、現在まで残る草稿に「Riso (米)」という言葉を書き残している。

『リゾットの国』イタリアのお米の歴史 | 日本お米協会 |「選ばれるお米」をつくる農家コミュニティメディア

レオナルド・ダ・ヴィンチも裾をたくし上げて腰をかがめて田植えをしたんだろう、と思いを馳せるのも旅の浪漫なのかもしれない。 
 

チェンマイと米

タイ旅行もどの都市の食べ物も美味しかった。ウムウムと味に頷きながらタイグルメを頬張る妻を思い出す。その中でも印象に残っているのはチェンマイだ。

チェンマイはいわゆる古都をうりにした観光地なのだが、京都や奈良もしくはカンボジアなどを想像していくと肩透かしをくらうはずだ。

なんというか全体的に金ピカ、ギラギラなのだ。

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チェンマイを代表する寺院の一つ、ワット・プラタート・ドイ・ステープ

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極彩色の仏像、電子工作がほどこされた仏像たち
容赦なく塗り直されていたり、謎の電子工作が組み込まれた仏像があったり、と古都感がない。これも現在進行形で仏教が生活に根付いていることのあらわれなのだろう。

思っていたのと違う、という印象は米でも感じた。

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一つ目の店で食べたレッドカレーと米。スパイスがきいたカレースープにパラパラの米をひたしてひと口。妻と顔を見合わせて「うまい!」とシンクロした。これぞ想像するタイ料理と米だ。

しかし、チェンマイに滞在しているうちに食べたパラパラお米はこれが最後だった。それから訪れた店々で出会った米は違った。もちもちしていたのだ。

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左奥、竹かごに入っているのがチェンマイのお米

小ぶりな竹かごに入っているのでフォークや箸だと少し取りづらい。聞いてみると手で食べてもよいそうだったが、少し抵抗があったのでフォークでたどたどしく食べる。妻は俄然もちもち派だったので、口に入れた途端、顔がぱぁーと光輝き、ギラギラとしたチェンマイ然とした顔になっていた。

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タイ北部の郷土料理がぜんぶ乗ったカントーク料理、ここにも竹かごに入ったもち米が出てきた

日本で食されるジャポニカ米にうるち米ともち米があるように、インディカ米にもうるち米ともち米がある。バンコクなどではうるち米が主だが、チェンマイなどタイ北部はもち米が伝統的に食されているとのことだった。

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早朝に行った托鉢でももち米があった

ミラノでは米はあくまで食材のひとつという感じだったが、チェンマイでは主食としての根付き方がひと味違う。もち米を主食とする民族が主体となって育まれたのがチェンマイのラーンナーとよばれる文化なので、そういった印象もあながち間違いではないのだろう。

それにラーンナー文化のラーンナーは「百万の田、多くの田」という意味だから、米と密接に結びついた文化であることは間違いない。

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ただナイトマーケットの謎寿司には勇気が出せなかった……はたしてもち米だったんだろうか。  
 

日本と米

ミラノ、チェンマイでは美味しい郷土料理と米に出会った。日本国内の旅行はというと、米を主食とする点はチェンマイと同じだが、ひと味違った情熱を感じる。

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小諸「中棚荘」、米中心の完璧なフォーメーションの朝食

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黒部ダム黒部ダムカレー

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和歌山アドベンチャーワールドの象とぞうさんカレー

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棒状おにぎり?旭川のファーストフード、ジュンドッグ

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個人的ベストご飯のおとも系お土産、島根のするめ麹漬け、麹も米麹だ

これだけ米ありき、米を使ってどうにかしてやろうという米ドリブンな料理が多いのは日本だけだと思う。

さて、国内旅行で一番思い出深い米はなんだったろう。妻と意見が一致したのは北海道旅行で食べたおにぎりだった。

帰りの飛行機の時間までに軽く小腹を満たそうと札幌駅で見つけたおにぎり屋さん「ありんこ」。後で知ったが有名店らしい。

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ありんことメニュー

店名でちょっと躊躇したが思い切って入って正解だった。べにしゃけ、うめ、ツナマヨなどの定番以外もチーズかつおなど魅力的な具がたくさん。

この北海道旅行も美味しいものだらけで目を輝かせていた妻は、おにぎりも美味いのかよ北海道、と畏敬の念とともに米を噛み締めていた。

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ありんこのおにぎり、かぶりつく娘(当時3歳児)

 

米と旅

ミラノ、チェンマイは美味しいお米と米にまつわる歴史があった。また、北海道を加えて米エピソードで思い出深かった3つの都市がのいずれも各国の北部に位置するのは偶然かもしれないが、これもなかなか面白い。

あとから思い返してもこれだけ気づきがある旅と米。旅行に行った当時はさほど意識していなかった米の使われ方も俄然興味が出てきた。むしろ米が主役の推し米を巡る旅も楽しいかもしれない。

 
 
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