ハモネロ デ スノコ
困った。
ハモン・セラーノを置く台がない。
とりあえず娘のカタカタに乗せてみたが……
はてなからの贈り物
ある日、家に肉が届いた。
それは肉というにはあまりに……
大きく、ぶ厚く、重く、そして……
いろいろと大雑把すぎた……
一本の肉塊と一枚の紙。
自分で応募して当たった景品なので心当たりはあったのだけれど、忘れた頃にやってくるにしてはインパクトのあるお届け物だった。
食べ方とか、さしたる説明もない。
肉送ったから、煮るなり焼くなり好きなようにしてね!というかなりはてならしい?投げっぱなしな景品だ。どう食べろっていうんだ!
何より、これ、想像していたものより大きかった。
1歳2ヶ月の娘(75cmくらい)と比較
重さは約7kg。娘(9kg)よりちょっと軽い。
複雑な心境になる表現だが、1歳2ヶ月の乳幼児とおなじくらいの大きさの肉が送られてきたのだ。
ハモン・セラーノに必要なもの
ハモン・セラーノは、100グラム1000円とか数枚なのに600円とか、それなりのお値段がする高級生ハムだ。世界三大ハムの1つでもある。
ハモン・セラーノ(西: Jamón Serrano)はスペインで作られる生ハムである。「ハモン」とはハム、特に熟成したものをいい、「セラーノ」は「山の」という意味である。 ハモン・セラーノ - Wikipedia
実際は、我が家に届いた「原木(木みたいだからこう呼ばれるらしい)」と呼ばれる塊の状態で作られ、そこから切り出して食す。
もちろん、原木で買うと相応のお値段がする。我が家のハモン・セラーノ様は少なくとも2万円前後はするようだ。
実は以前からハモン・セラーノについてはネットの記事で知っていた。
「買ってしまった」やら「買ってはいけない(まんじゅうこわい的な)」と題されるほど個人が安易に手にできる食材ではないことから、気になりつつもおいそれ手を出せないよなぁ、と淡いあこがれを抱いていたのだ。
@nifty:デイリーポータルZ:豚の足一本分のハムを買ってしまった
生ハム原木を買ってはいけない(2016年追記あり) | N-Styles
そういう意味では、念願の食材が手に入ってワクワクが止まらない感はあったのだけれど、肝心なことに気づいてしまった。
購入した方々の記事を読み返すとないものがある。
そう、台がない。
台は「ハモネロ」と呼ばれる。この台がないとハムを切り出すときに困るので、原木を買った人には必須のグッズなのだ。
だけども問題は今日の肉、台がない
と口ずさむ私。
はぁ?という顔でこちらを見る妻。
さぁ、どうしよう。
はじめての食育?
当座しのぎで手押し車の上に置いたが、娘が今にも運搬しようとウズウズしている。
「台がない」問題の解決策を思案する間、ハモン・セラーノはとりあえず娘のプレイゾーンに置くことにした。
おもちゃたちの「新しい仲間?……」という戸惑いの声が聞こえてくる
冒頭に書いたとおり、届いたハモン・セラーノは全長75cm重さ7kg程度。娘とほぼ同じ。
台について調べる過程で知ったが、ハモン・セラーノの熟成期間は少なくとも36週らしい。おそらくこの原木も1年近くかそれ以上は熟成されているのだろう。
生後14ヶ月(当時)の娘を横にするとますます複雑な心境になる。
ハモン・セラーノにマウントポジションを取ろうとする娘
ちょうどいろいろな動物を紹介する「けもの」という絵本を愛読していたので、これがブーブの後ろ足なんだよ、と読み聞かせをしてみる。
にゃーにゃやわんわに比べてモーモやブーブは人気薄
いつもは興味なさげにササッとめくってしまう「かちく」のページをじっくり見ている。興味をもってくれたのだろうか。
買うべきか
さて、台だ。
ネットで調べると、決して安いものではない。というか高い。
楽天で在庫有りのハモネロ単体の最高額を調べてみると10万円もした。
送料無料!【アフィノックス(Afinox)ハモネロ(天然大理石)】【05P03Sep16】 |
だいたいハモン・セラーノの原木を買う人は多かれ少なかれセレブなのだ。
そりゃ台の売り文句に「クラシックなイメージの重厚感あふれる天然大理石」「一生もの」なんてキャッチコピーが踊るわけである。
中には5000円程度のものもあるけれど安いわけではない。それに、食べ終わった後の使いみちの無さを想像すると、やはり簡単にポチッとできない。
買うや買わざるや、悩ましい。
ささやかにDo It Youreself
結論が出ないまま所用で外出。その帰りに、ふと見上げるとある看板が目に入ってきた。
DOIT、ドンキホーテグループのホームセンター
Do It YoureSelfねぇ、うーん、自分で作ってみる?
と、思ったが、はっきりいってホームセンター的なお店とは無縁、自分でものを作った記憶を辿ろうとすると図工に辿り着きかねないほど、これまでの人生は工作スキルに一切ポイントをふってこなかった。
入店するにはしたが、なんというか目がすべる
何をどうすれば良いかわからないし、板を切って、釘を打って、なんて無理ゲーだよなぁ、と茫然とさまよっていると、見慣れたものが目に入った。
すのこか
万能ねぎ、万能すのこ、万能素材界のツートップの一つを使えば私でもなんとかなるかもしれない。
軽いノリでスノコを軸にそれっぽい材料をえらぶことに決める。と、不思議なもので材料を探すのが楽しくなってきた。
ネジの世界の深淵をのぞくなど
一通り材料を揃えたが、組み合わせるために部分的に穴を広げる必要があることがわかった。ここで工具を買ったら費用的に本末転倒だ。
ところが、ホームセンターは工具室も完備、てめーでやりやがれ精神に満ち溢れていた。
ゾンビに襲われたらここに逃げ込もう
万力の固定力に感動するもやしっ子
なんとか狙ったとおりキリを通して作業完了。組み立ては家ですることに。もちろん腑抜けた手のひらにはしっかりとマメができていた。なさけない。
スノコでハモネロを作る
スノコでハモネロを作ったことがある人はおそらく少ないだろう。まぁ、作ると言っても組み合わせるだけなのだけど。
スノコとスノコ拡張用の木材とネジと謎の金属板、材料費は2000円に収まった
ガシガシと組み合わせて
キリで拡張した穴にネジを2本通す
一応、このネジがスノコハモネロの肝で、上下でガッツリと挟み込んで固定をしてくれるはず。
いい塩梅に固定ができた
これだけでもかなりしっかりと固定されるが、さらに台座でも固定しないとハモネロらしさがでない。
本来の使い方が不明な謎の金属板をネジで固定
ガッツリ固定できた
行き当たりばったりで作ったにしては、わりとそれっぽいものが出来た気がする。いや、賛否はあるだろうが、そういうことにしたい。
ハモン・セラーノ開封の儀
ハモン・セラーノが届いてから2日が経った。
冷蔵された状態で届いた場合は1日から2日程度おいてから開封したほうがよいそうなので、タイミング的には悪くない。
このあたりの手順は先人たちの教え(上で紹介した2記事)が非常に役に立った。
開封すると、独特なオイリーな匂いがたちこめる
カビや余分な油をふきとり
オリーブオイルでせっせと磨く
生ハムは乳酸菌が生きている発酵食品なので、冷蔵保存で休眠している乳酸菌が活性化するまで待たなければいけないとのことだ。セットに付属のオリーブオイルでハムの表面をていねいに拭いて、もう一日我慢する。@nifty:デイリーポータルZ:豚の足一本分のハムを買ってしまった
乳酸菌というと私にとっては長野の実家で母が作る野沢菜漬けだったりする。野菜に肉に乳酸菌さんまじ有能だよね、と妻と話しながら作業をすすめる。
テカテカ、仕上がってきたハモン・セラーノ選手
いよいよ我がスノコにハモン・セラーノを設置するときがやってきた。
手にマメを作ってオリジナルスノコ台を組み立てたり、娘が寝静まった夜中に肉を磨いたり、なんでこんなことしてるんだっけ?と何度も頭に「はてな」を浮かべながらも、一応はここまでだどり付いた。
妻「おもいのほか、それっぽい」
私のものづくりへの期待値が低いというのもあるけれど、辛口レビューが多い妻に及第点をもらえたのがうれしい。
ちなみに置く向きはどっちが正しいのだろうか。
肉付きが良いほうが上にくるパターン
グーグルで画像検索すると、蹄の裏を上に向ける場合が多いことがわかる。こうすると、肉付きの良いほうが上に来る。
ただ、読めないスペイン語を無理やり翻訳したりして調べた結果、「初心者はうまく切れないだろうから、失敗してもいいように初めは肉付きが良くない方を上にしてごらん」という記事をみつけたので、今回はそれに習って設置することに(次回はあるのか?)。
いざ、玄関へ
さて、乳酸菌の活性化のためにこの状態でもう1日程度は待つ必要がある。
やはり先人の教えで、玄関に置くと映える(というか我が家も置き場所がそこしかない)と覚えていたので、移動することに。
付属品のラベルと荒縄?、それに娘の豚さん積み木を置いて完成
湿度と温度はどの程度がよいんだろう
うーむ、良い出来ではないだろうか。
後日、孫娘に会いに実家からやってきた母が玄関で悲鳴を上げていた。
ハモン・セラーノのある生活
さぁ、食べるぞとなってからが、また試行錯誤だった。
ものすごく硬い
そもそも専用のナイフじゃないのだけれど、たしかにコツが必要で売っている薄い生ハムを切り出すのは至難の業だとわかる。
これが限界
本日の収穫 赤ワインを添えて
しかし、先人たちの教えにもあったけれど、市販のものでは味わえないあえての厚切りハモン・セラーノは絶品だ。
今まで食べたことがない肉肉しい生ハムの食感、噛むごとに肉の味がじわりと口に広がる。赤ワインを口に含んで鼻から抜ける風味を楽しむ。
さて、明日から残りの肉塊をどうやって食べようか。
ある日は、スーパーで買ったチーズピザの上に。今年1番のうまいビールが飲めた。
ある日は、パッションフルーツとフルーツパインといちごで。
パッションフルーツといちごはイマイチだったが、フルーツパインは結構合う。
ある日は、厚切りトーストにとろけるチーズと焼き茄子で。今年2番目にうまいビールが飲めた。
まとめ
今回良かったのは、ささやかながらも、モノ作りの楽しさに触れることができたことでした。これまで何かあると既製品を買うことしか考えていなかったけれど、「作ってみる」という選択肢を増やすことができたのは収穫でした(すのこ自体は既製品なのだけど)。
やはり、行動の変化や新しい体験を促すきっかけになる買い物や贈り物は素晴らしいと思う。今年の娘の誕生日にはそういったプレゼントを贈りたいなぁ。
というわけで、ハモン・セラーノが贈られてきたことをきっかけに、スノコでハモネロをつくった話でした。スノコハモネロは解体されて本来のスノコの役目を全う中。
それどこ大賞「買い物」